092号

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104 高知論叢 第92号ている。しかし,こうした失業率の改善傾向とうらはらに,1990年代後半以降,雇用の流動化と多様化が急激に進展し,非正規雇用の急速な拡大と正社員の二極化1ともいうべき状況も指摘され,不安....

104 高知論叢 第92号ている。しかし,こうした失業率の改善傾向とうらはらに,1990年代後半以降,雇用の流動化と多様化が急激に進展し,非正規雇用の急速な拡大と正社員の二極化1ともいうべき状況も指摘され,不安定かつ低所得就労層が増大している。 このように数値が実態や実感と乖離しているとすれば,「(完全)失業者」(以下,「失業者」と表記する)というタームに体現される「失業」のとらえ方,ひいては「労働」のあり方を再検討すべきではないだろうか。本研究は,こうしたいわゆる失業率に表われない,しかし不安定で低所得であり,長期的にはより深刻な生活困窮者として表面化する可能性がある層 労働力人口のなかでもその比重は増大している を広く「潜在的失業」状況2にある者として捉え,就労や求職活動に関する意識や行動に焦点を当てて考察することを目的とする。 したがってまず,本稿では,近い将来の若年労働力人口であり,かつ現実の求職者を含む大学生(2~4年生)を対象に実施した就労意識や求職活動に関するアンケート調査の結果を分析・検討し,「潜在的失業」状況の特徴と可能性について考察する。また本調査は,実際の「潜在的失業」状況にある者を対象としていないため,「実態」調査ではなく,いわば「意識」調査あるいは「行動予想」調査ともいうべきものである。なお本稿は,担当教員(西島)の指導のもと,学生( 能井, 橋田。 両者とも当時2年生) が半年間のゼミ活動の一環として取り組んだ調査研究のまとめであり,今後の研究・作業課題を多く残すものである。  1.調査の概要(1)調査対象者,回収率 本調査は,筆者らの所属する学部学科の学生のうち2~4年生を対象に20071 木下武男( 2008) は,日本における労働市場は2000年以降,それまでの「流動化」段階から「非正社員化」段階という局面に入ると同時に,一方の正社員の間でも分岐が生じ,低所得で非定着型の正社員が増加していることを指摘している。2 野村( 1998) は,日本における「失業」の定義が欧米諸国と比べ非常に狭く,算出される「(完全) 失業率」も低いことを問題視している。特に,求職活動を行っていないが仕事に就きたいと思っている者を「求職意欲喪失者」, また, フルタイムの仕事を求めながら, 見つからないためやむを得ず短時間労働を行っている者を「非自発的パートタイマー」としたうえで,こうした層を失業者として顕在化しない「潜在的失業者」として捉えることの重要性を指摘している。