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112 高知論叢 第92号 全体の回答をみて,「死」,「人生の終わり」,「自分の存在,位置を見失うもの」,「生活や未来に不安を感じるもの」など全体的に否定的な意見が多い反面,「次への転機」,「新たなスタート....

112 高知論叢 第92号 全体の回答をみて,「死」,「人生の終わり」,「自分の存在,位置を見失うもの」,「生活や未来に不安を感じるもの」など全体的に否定的な意見が多い反面,「次への転機」,「新たなスタート」など肯定的にとらえる意見や「つまずいただけ」など,失業状態を一時的な失敗のようなものと捉える回答も目立った。また,失業を肯定的に捉えている人の多くは,長所や資格など人にアピールできるものを持っており,目標を持って大学生活を送っているという傾向がみられた。(2)「潜在的失業」状況に関する検討課題①「潜在的失業」状況とは 筆者らは,ゼミで失業率という観点から労働・雇用問題について学ぶなかで,総務省が行う労働力調査にもとづき公表される失業率には表れない―潜在的な―失業者が労働・雇用問題を考える上で非常に重要な存在であると考えた。日本において一般的に用いられる「(完全)失業者」とは,①仕事がなくて調査期間中に少しも仕事をしなかった( 就労していない),②仕事があればすぐ就くことができる( 就労意欲がある),③調査期間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた( 求職活動を行っている,または過去の求職活動の結果を待っている) という3つの条件をすべて満たす者であり,1週間の調査期間中にこれら3つの条件を満たす者として把握された者である。また,この「失業者」が労働力人口に占める割合が「(完全)失業率」として表される。 一方近年,アルバイトやパートタイマー,日雇い派遣などの不安定就労にある者や,派遣・契約社員などのような非定着型の非正規雇用者が急増しているが,こうした人々が置かれた不本意かつ不安定な労働・生活状況における問題を考えると,実態として,また将来的にも,安定的・長期的な労働機会を失う可能性は小さくなく,潜在的な失業者としてとらえることは難しくないと考える。 さらに,実質的には完全に失業状態にあるニートやホームレス,生活保護受給者などの多くが失業率という公の数字には反映されないとすれば,労働市場や雇用情勢について客観的に実態をうかがい知ることは不可能ではないだろうか。 「潜在的失業」に関して明確な定義はないが,ここで重要なのは,日本における失業者の定義・条件はごく一部の失業者にしか該当しないということであ