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36 高知論叢 第92号存在の永久の自然条件である労働そのものと一致することになる②。古典派にあっては,賃労働が剰余労働をふくむため労働者にあたえる苦痛も,労働本来の性格とみなされる。しかし,生産条件が資....

36 高知論叢 第92号存在の永久の自然条件である労働そのものと一致することになる②。古典派にあっては,賃労働が剰余労働をふくむため労働者にあたえる苦痛も,労働本来の性格とみなされる。しかし,生産条件が資本に転化するのは,それが圧倒的な大多数にたいしてごく少数の人々の排他的な所有に帰属するばあいだけである。だから,資本とは,たんなる生産条件ではなく,排他的所有になる生産条件③にほかならない。「資本は, 社会の一定部分によって独占された生産手段であ( る) 。④」(Kapital, Ⅲ,S . 8 23)マルクスが,資本をもって「労働条件の疎外4 4 4 4 4 4 4された形態4 4 4 4 4 」(Mehrwert, MEGA, Ⅱ/3・4,S . 1 493,圏点―マルクス) というのも,おなじ趣旨である⑤。資本家が排他的に所有する生産条件のうち,一方の生産手段は,他方の生活手段が転換された労働力によって生産的に消費され,剰余価値をふくむ新生産物にうまれかわる。等価なしに不払労働を入手する資本主義的取得様式がなりたつのは,資本をあらわす生産条件の排他的所有に起因する。 ところが,排他的所有になる生産条件は,それ自身一つの客体にすぎないため,生産関係の表現であるその深層がみおとされがちになる。たとえば,マニュファクチュアや機械制大工業にあらわされる生産様式をもって,生産関係をふくまないたんなる労働過程次元での生産方法ととらえる見方がある。しかし,排他的所有になる生産条件の具体化である生産様式をもって労働過程次元での生産方法に還元する見地は,生産関係の看過をしめす典型的な例といって過言でない。貨幣がそれ自身社会関係の表現であるのとおなじように,資本をあらわす排他的所有になる生産条件は,それ自身,特定の生産関係の表現にほかならない。 すなわち,生産条件の排他的所有は,さかのぼってみれば,生産条件をおのおのが所有する独立生産者の両極分解にもとづく結果である。ここからもわかるように,生産条件の排他的所有は,それから排除される無所有の立場とおもてとうらの関連にたつ。排他的所有になる生産条件は,それ自身をみれば,なるほど一つの独立した存在にすぎないが,その所有から除外された圧倒的に大量の無産者の存在を前提にしてはじめてなりたつ。貨幣の生成は,商品の存在ときってもきれない因縁をもつのとおなじように,生産条件の排他的所有は,