092号

092号 page 44/132

電子ブックを開く

このページは 092号 の電子ブックに掲載されている44ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
42 高知論叢 第92号の根拠である秘密をふくんでいる⑥。マルクスにとって剰余価値が生産条件の排他的所有そのものの所産である因果は,シャボン玉がまるいのとおなじように,絶対的な法則である。① 「労働者に剰余....

42 高知論叢 第92号の根拠である秘密をふくんでいる⑥。マルクスにとって剰余価値が生産条件の排他的所有そのものの所産である因果は,シャボン玉がまるいのとおなじように,絶対的な法則である。① 「労働者に剰余労働を強制する関係は,彼の労働諸条件が彼に対立して資本として定在しているということである。」(MEGA, Ⅱ/3・1, S . 182) ようするに, 生産条件の排他的所有にもとづいて,労働力が生産過程での資本の成分をなし,価値を増加させる権能が資本の機能になるため,労働力から剰余価値が発生する。「労働力は,可変資本が生産過程のなかでとっている形態である。」(Kapital, Ⅰ , S . 616)「価値を創造し増加させる力は, 労働者のものではなくて資本のものである。」(MEGA, Ⅱ/3・1 , S . 99)② マルクスは,重農学派にたいしてつぎのような批判をくわえている。「剰余価値の形成が,資本そのものからは説明されないで,ただ,資本の一つの特定の生産部面である農業だけのものとして主張される。」(Kapital, Ⅱ , S . 222)資本そのものからの剰余価値形成の説明こそ,解決すべき問題だという明言は,千鈞のおもみをもつ。③ 生産条件の排他的所有が剰余価値を規定するため,資本主義では,生産条件に代表される死んだ労働が労働者による生きた労働を支配するという主客転倒がなりたつ。つまり,死んだ物質的財貨が生きた労働者をつかって自己増殖する一方,労働者は,生産のための生産活動がさかんになるためのたんなる手段になる。マルクスは,資本主義をもって 「生産過程のために労働者があるのであって労働者のために生産過程があるのではないという形態」(Ibid., Ⅰ, S . 514) と特徴づけている。また,『共産党宣言』 ではつぎのようにいわれる。「ブルジョア社会では, 資本が独立的で人格的であるが, 働く個人は非独立的で非人格的である。」(Manifest, Werke, Bd.4, S . 476) ここで, 資本が独立的な人格なのは, 死んだ労働が主体となって労働者を支配するためである。ぎゃくに,労働者が非独立的で非人格的なのは,死んだ労働の自己増殖のたんなる手段として客体的な存在にすぎないからである。『共産党宣言』は,なんど読みかえしても底がふかい。④ 「上着の等価物存在4 4 4 4 4 は,いわば,ただリンネルの反射規定4 4 4 4 なのである。」( 『資本論第1巻初版』国民文庫,22[原]ページ,圏点―マルクス)⑤ 別の箇所に,「剰余価値の本質(das Wesen), すなわち剰余価値とは, 売り手がそれにたいして等価物を与えなかったのに,つまり売り手がそれを買わなかったのに,販売において実現される価値であるという剰余価値の本質」(Mehrwert,MEGA,Ⅱ/3・2, S . 349) という文言がある。ここで,「剰余価値の本質」とは,交換を媒介にしながら等価なしで剰余労働を取得する契機をさすが, 交換を基礎にした不払労働の取得は,生産条件からの労働者の分離にもとづくから,「剰余価値の本質」の内面には,剰余価値が特有な生産関係の果実であるという要素がふくまれている。