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生産関係と資本の価値増殖43⑥ マルクスは,「資本4 4 と労働4 4 との同一性」(Ibid., MEGA, Ⅱ/3・4,S . 1392,圏点―マルクス)を強調しているが,資本と賃労働の同一性には,生産条件の排他的所有が労働力による....

生産関係と資本の価値増殖43⑥ マルクスは,「資本4 4 と労働4 4 との同一性」(Ibid., MEGA, Ⅱ/3・4,S . 1392,圏点―マルクス)を強調しているが,資本と賃労働の同一性には,生産条件の排他的所有が労働力による剰余価値創造を直接規定する因果関係がふくまれると推論される。したがって,『資本論(Das Kapital)』という表題は,賃労働の分析をその射程にふくむ事実からおして,資本と賃労働との同一性を暗示している。ついでにふれれば,資本が労働力による剰余価値創造を成立させるその資本と賃労働との同一性とおなじ関係は,富と貧困との相関にもあてはまる。資本家にとっての富である剰余価値は,その分量だけ労働成果のおちこみであるため,それ自身,労働者にとっての貧困を規定する。労働力による剰余価値創造を生産条件の排他的所有のはんめんにみいだす方法は,貧困を富のはんめんととらえるマルクスの貧困規定の一番の特色とおなじ性格をもつ。剰余価値が富と貧困の二重性格をもつように,生産条件の排他的所有は, 資本と賃労働の二重性格を内包する。資本と賃労働との同一性は,富と貧困の同一性でもある。さらに,資本と賃労働の同一性命題から,資本の増大は, 同時に賃労働者数―労働者人口そのものとそのうちの就業者数の両方―の増加でもある関連がなりたつ。 「資本の蓄積はプロレタリアートの増殖なのである。」(Kapital, Ⅰ, S . 642)「資本の増大4 4 4 4 4 とプロレタリアートの増殖4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 とは,同じ過程の対極的に分かれた所産4 4 だとはいえ,同じ過程の共属的な所産4 4 として現われる。」(『直接的生産過程の諸結果』493[原]ページ,圏点―マルクス)資本蓄積は,労働者人口をふやすとともに,就業労働者数も増加させる。  4 先行研究の陥穽 これまでの展開で,生産条件の排他的所有の必然的な帰結として,労働力による剰余価値創造が規定される脈絡をといた。ところが,通常,剰余価値は,生産条件の排他的所有とは別個に,労働力そのものの特有な属性からみちびかれる。しかし,剰余価値の発生根拠が労働力の特殊性にあるとすれば,剰余価値をその独自な産物としてうみだす資本は特定の生産関係だという命題は,空語と化してしまう。そこで,最終の本節で,剰余価値を労働力そのものの特殊性からみちびく見地に検討をくわえ,資本が生産関係だという命題の未消化を指摘する。 資本が生産関係だという命題の軸心は,生産条件の排他的所有の直線的な結果として剰余価値がなりたつ一本のザイルのように強靱な社会関係にある。剰余価値は,生産条件の排他的所有がもたらす独自な所産であるため,資本は,