092号

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46 高知論叢 第92号る。だから,労働力の再生産にたるだけの限定された必要労働分量をあらわすその価値も,必要労働をこえる剰余労働となって実現されるその使用価値もともに,生産条件の排他的所有のもたらす社会....

46 高知論叢 第92号る。だから,労働力の再生産にたるだけの限定された必要労働分量をあらわすその価値も,必要労働をこえる剰余労働となって実現されるその使用価値もともに,生産条件の排他的所有のもたらす社会的な結果である。労働者が生産条件を共同的にか個人的にか所有するばあい,蓄積財源を生産する労働支出をふくむ1労働日は,そのすべてが生産条件を所有者する労働者の再生産にようする必要労働にすぎない。その意味では,マルクスにおける労働力商品のもつ意義は,二重である。その一つ目の意義は,価値をもつ商品として販売される対象は,価値形成要素である労働ではなく,その源泉である労働力だというエンゲルスの強調した周知の論点④である。しかし,労働力商品のもつ意義は,それ以外にもう一つ別個に存在する。その二つ目の意義は,労働力商品のもつ価値と使用価値という二つの要因が,生産条件からの分離によって特殊歴史的に規定される点にある。労働力の価値と使用価値は,それが商品としてもつ二要因だから,その商品化を条件づける生産条件からの分離によって特殊歴史的に規定される。これまでの研究史にあっては,労働力の二要因が生産条件からの排除に規定された特殊歴史的な要素である事実に,スポットがあたっていない。ようするに,古典派は,資本主義を生産の絶対的な形態とみる立場にわざわいされて,排他的所有になる生産条件から排他的所有という社会関係をみすごしたが,それと同様に,労働支出の源泉としての労働力それ自身に価値増殖の根拠をもとめる立場にあっては,その二つの要因に内面化された生産条件の排他的所有の作用がみおとされている。 以上,本節で,蓄積財源を生産する労働力の属性に剰余価値の発生根拠をもとめる立場には,資本が生産関係だという命題のなまかじりがある事実を吟味した。生産条件の排他的所有という特有な生産関係は,それ自身資本をなりたたせると同時に,労働力による剰余価値創造を規定するのである。① ?松 渉『マルクスの根本意想は何であったか』 情況出版,1994年,97ページにも,おなじ主張がある。② 資本は,剰余価値のたんなる取得の主体だという見地は,生産過程以前の単純流通上での貨幣の資本への可能的な転化の否定につながる点で,累をおよぼす弊害をもつ。労働力が剰余価値をもたらす特性をもち,資本は,その取得の原因にすぎな