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生産関係と資本の価値増殖47いとすれば,生産の完了時点をまって資本が成立するという見方がなりたつ。つまり,資本が剰余価値のたんなる取得の原因だとする立場は,第5章「労働過程と価値増殖過程」ではじめて,第4....

生産関係と資本の価値増殖47いとすれば,生産の完了時点をまって資本が成立するという見方がなりたつ。つまり,資本が剰余価値のたんなる取得の原因だとする立場は,第5章「労働過程と価値増殖過程」ではじめて,第4章表題の意図する「貨幣の資本への転化」がなりたつという理解とむすびつく。しかし,生産物ができた時点で資本が成立するとすれば,資本とその果実の剰余価値との同時成立は,概念上収拾不能な前後撞着をふくむことになる。けだし,前貸価値をこえる価値の超過分は,資本を根本前提にもつその特有な産物であるかぎりで,剰余価値という規定をうけとるのだからである。ぎゃくに,剰余価値が資本から内在的にうまれるという立場からすれば,貨幣は,単純流通上であらかじめ資本をあらわす一般的等価物として剰余価値をうむ能力をもつため,貨幣の資本への可能的な転化がなりたち(『資本論』第Ⅰ巻第4章 「貨幣の資本への転化」),生産過程で,資本による剰余価値の創造が実現することになる。「資本による4 4 4 4 4 労働力の生産的消費」( Kapital, Ⅱ, S . 64, 圏点―頭川) すなわち貨幣の資本への現実的な転化は,単純流通での貨幣の資本への可能的な転化を前提する。資本を剰余価値の取得のたんなる主体だとみる立場は,剰余価値生産完了時点ではじめて資本の成立をみとめる考え方と通底している。③ 「産業資本は, 資本の存在様式のうち, 剰余価値または剰余生産物の取得だけでなく同時にその創造も資本の機能であるところの唯一の存在様式である。」( Ibid.,S . 61)④ 『賃労働と資本』 国民文庫,村田陽一訳,9-21ページ。  む す び 本稿で,生産条件の排他的所有の直接的な帰結として,それから分離された労働力による剰余価値の創造が規定されるすじみちを分析して,資本が生産関係だという『資本論』の基軸をなす一根本命題をときほぐした。だから,資本を蓄積された労働ととらえる古典派と労働力の特殊性に剰余価値の根拠をもとめるマルクス以後の先行研究とは,生産条件の排他的所有こそ資本の価値増殖の根拠をなす脈所を看過する点で,同一線上に位置づけられる。特定の生産形態にはそれ特有な生産関係が対応するというマルクスの歴史的な観点は,階級社会のばあい,剰余労働が生産条件の特有な所有形態に規定された生成方法をもつというパラダイムとおなじである。生産条件の特定の所有形態には剰余労働の独自な創出方法が対応するという大局的な認識にかければ,生産関係による剰余労働創造の内面的な作用がみのがされる。生産関係の欠如というマルク