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持続可能な都市農村交流拠点( 農林漁家民宿) のために65であり,グリーン・ツーリズムと一般のサービス業の間にある本質的な違いである。(1)社会的活動  「交流人口による地域の活性化」といった堅苦しい表現は....

持続可能な都市農村交流拠点( 農林漁家民宿) のために65であり,グリーン・ツーリズムと一般のサービス業の間にある本質的な違いである。(1)社会的活動  「交流人口による地域の活性化」といった堅苦しい表現はいらない。「自分たちの地域の良さをお客様から教えられた」「農林漁業への誇りを取り戻した」という声はグリーン・ツーリズムに取り組んできた地域のほとんどで耳にする。最終的には「ここで生きてきて良かった」という住民の満足感をグリーン・ツーリズムは目指しているといえる。 また,実践の現場では「 ( 誇りや喜びの伴わない) 儲けだけを目指す経済活動ならしたくない」 という言葉もよく聞かれる。 それもまた確かにグリーン・ツーリズムの本質を表現している16ものではあるが, 社会的な意義を重視するあまり, 時 には経済性を軽んじるように聞こえることすらあり, 後述する課題の一因ともなっている。(2)経済活動 一番イメージしやすいのは体験型修学旅行の受け入れであろう。そして,受け入れによる地域の潤いを,農林漁家個人個人がどう受け止めているかといえば,農林漁業収入だけで生活していくことの限界の中での経営の多角化ということになる。グリーン・ツーリズムの経済性については京都府美山町での経済効果についての報告がある17ほか,農家民宿については農林水産省の施策説明資料(平成19年3月)に,自らの農林水産物に付加価値をつけたサービスによる所得や,地域内農産物の需要や地域内雇用の創出などの経済効果が確認されているが,こうした経済効果を支える個々の経営のありかたについてグリーン・ツーリズムで取上げられることはほとんど無く,わずかに,農村の女性起業の視点で部分的に論じられている18。域農業振興という公益性と事業としての採算性の狭間で事業展開している。」と指摘している。本稿での「社会的活動」は「公益性」,「経済活動」は「採算性」に該当する。16 本稿ではグリーン・ツーリズム実践者側の視点から「社会的活動重視」の傾向を述べているが,既存研究でも「経済効果だけでなく社会的効果が大きい」とするものが多い。ただ,それが経済効果を圧倒的するほどに社会的効果が大きいということなのか,経済効果が少ないために社会的な効果に目を向けることになっているのか,実践者自身の「本音」と併せて今後なお検証が必要と思われる。17 霜浦森平・宮崎猛( 2002) および霜浦森平・坂本央土・宮崎猛( 2004) を参照のこと。18 WAN研究所が発表した一連の論文「女性の起業とそのノウハウ」( 2007a) から(2007l) を参照のこと。