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70 高知論叢 第92号る。体験型観光という外圧に押され開業を急ぐあまりに「書類を書き申請料を払うだけでよいから」という安易な開業を推進することも珍しいことではない。 前述の建築基準法と消防法の事例でも,....

70 高知論叢 第92号る。体験型観光という外圧に押され開業を急ぐあまりに「書類を書き申請料を払うだけでよいから」という安易な開業を推進することも珍しいことではない。 前述の建築基準法と消防法の事例でも,「33㎡」「50㎡」「100㎡」という「面積」を基準に手続きが容易になっている部分はあるが,決して「安全性」そのものが緩和された訳ではない。ここを十分に理解したうえで「緩和」を活用することが望ましい。ただ,このような複雑な法体系の中で「安全」を実質的に確保しようとする場合,法を熟知しグリーン・ツーリズムを理解して,総合的に判断しアドバイスしてくれる専門家が必要である。 今,全国レベルで「農家民宿の品質確保」 25 の検討が始まっている。その取り組みをサポートするものとして,法令遵守のチェック機能と開業手続きの円滑化,コンプライアンスを含む品質の保証( 工程管理,認証制度等) を目的とした専門家による農林漁家民宿サポートシステムをすみやかに構築すべきである。②グリーン・ツーリズムの認知向上(市場の成熟) 心ある人が足を運んでくれさえすれば農山漁村には必ず「感動」がある。2泊,3泊もすれば涙なしには別れがたい絆ができる。ただ,今のところ農山漁村でその絆を深めているのは,「求めるものがはっきりして行動に移せる」人々であって,「求めながらも待っている」人々には情報が届いていない可能性がある26。 新聞やテレビで田舎体験の話題は多くなりつつあるが,そのほとんどが受入側からの情報であり, 求めつつもまだチューニングをしている段階の都市の人々(一般多数のエンドユーザー)がキャッチしやすい周波数に絞れないまま,片思いのような情報発信になってはいないだろうか。 さらにグリーン・ツーリズムは「旅行」と似た消費行動であるため,旅行市場では体験型観光と混在し,エンドユーザーと農山漁村の間には旅行業者が介在する。多くの旅行業者がグリーン・ツーリズムの商品化を目指すとしながら,現実には既存の商品造成から離れていない27。25 品質保証等の動きには,農林水産省と国土交通省が実施する「農林漁家民宿おかあさん100選」や新潟県ふるさと民宿連絡協議会が取り組む「品質評価制度」等がある。26 下條龍二( 2005) p. 75は,「都市部の方々は圧倒的に情報不足を感じている」としている。27 この点に関しては,ごく一部ではあるが「旅行とは違う目的を持った宿泊や移動のサポートが必要」,「単純なレジャー目的の旅行でなく,お客様の大きな生活サイクルの中