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持続可能な都市農村交流拠点( 農林漁家民宿) のために71 不運にして飯田市のような地域振興の理念に基づいたインバウンド型旅行業を持たない高知県において,筆者の目に映るのは今までの旅行商品の鋳型のなかで居....

持続可能な都市農村交流拠点( 農林漁家民宿) のために71 不運にして飯田市のような地域振興の理念に基づいたインバウンド型旅行業を持たない高知県において,筆者の目に映るのは今までの旅行商品の鋳型のなかで居心地が悪そうなグリーン・ツーリズムの姿である。ずいぶん以前から,また全国的に「グリーン・ツーリズムは観光とは違う」という一番肝心なところのメッセージが繰り返されているのに,真意はなかなか伝わらない。 観光サイドから求められる「いい商品」には往々にして「感動領域で質のいい旅行商品」と「売る側にとって都合のいい旅行商品=買い手がつきやすい商品」の二つの意味がこめられている。旅行商品の造成において後者のようなマーケットインの手法が変え難いものであるとするならば,なおさらのこと,「旅行とは違う目的の空間移動や余暇活動」の需要を顕在化する必要がある28。そのためには,独りよがりな情報発信でなく,ただ広く知らしめればいいというものでもなく,「都市と農山漁村,何かを共有したいという感性」のフィルターを通したよりエンドユーザーに近いところでの情報発信が有効であると考える。③継続性 地域のグリーン・ツーリズムの行方を決めるのはその地域自らである。農山漁村の地域資源が「観光」によって掘り尽くされるまでの短期間,一時的だけでも元気になりたいというのが地域の主体的な判断であれば,継続性は必要ない。 ただ,前述したグリーン・ツーリズムへの期待が実現されることによってもたらされる「農村への共感」や「農林漁業への理解」「都市部での食への反省」は,多くのグリーン・ツーリズム実践者の「都市のパートナーとしていきいきと農山漁村で生きていきたい29」という願いにつながっている。そして,現状を見れば,グリーン・ツーリズムはそれを取り巻く法制度や商品市場とともに成熟する過程の途上にあり,期待の実現にはまだかなりの時間を要することは明らかである。都市と農山漁村双方が望んでやまない社会の変化が重要なものであれに移動や宿泊などを組み込む」といったグリーン・ツーリズムの特性に対応した旅行業者の動きも徐々に見られるようになってきている。今後に期待をしたい。28 グリーン・ツーリズムの来訪者側の条件を整備することも重要とされ,バカンス法の整備を提唱する動きもある。29 これは農家にとっては「誇りを持って農業を続け,ふるさとに住み続けること」であり,はからずも「農業と農山村地域の維持によって国土の保全が図られる(農業の多面的機能)」という政策課題に応えることにもなる。