092号

092号 page 74/132

電子ブックを開く

このページは 092号 の電子ブックに掲載されている74ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
72 高知論叢 第92号ばこそ,「持続性」がグリーン・ツーリズムの一番の課題と言われる所以である。 グリーン・ツーリズムの取り組みにある程度深く関わっていくと,「疲れを覚える」という特徴的な言葉を耳にする....

72 高知論叢 第92号ばこそ,「持続性」がグリーン・ツーリズムの一番の課題と言われる所以である。 グリーン・ツーリズムの取り組みにある程度深く関わっていくと,「疲れを覚える」という特徴的な言葉を耳にするようになる。「イヤになる」でもなく「楽しくない」でもない独特のニュアンスは,実はグリーン・ツーリズムを続けていく上での大きな課題に迫っている。つまり,「疲れはどこから来るのか」という問いに対する「対価をいただくようになってようやく『疲れ』が和らぎました」という経営者の答えが「経済性」の重要さを十二分に物語っている。 現実に,農家民宿,農家レストラン,体験イベントで行った「原価計算」結果からは,自らの労賃を圧縮していると見ざるを得ない事例,農山漁村特有の「もてなしすぎ」による経費の膨張傾向等が明らかになっている。採算性がないということは,受け入れ続けるほどに苦しくなっていくということであり,やがては個別経営体の「経済性」も地域経済からみた「経済性」も満たさないまま,多くの研究者が指摘するように,一時のブームで終わってしまう可能性が高い。  第3章 グリーン・ツーリズム( 農家民宿) の経済性 1.グリーン・ツーリズムが地域に与える経済効果 グリーン・ツーリズムがただのブームで終わらないためには,経済性の問題を抜きに語ることは出来ない。その際に重要となるのが,個別経営主体の経済性と地域経済から見た経済性の両立である。地域経済にどれだけ経済効果をもたらそうが,個別経営主体の経済性を無視していたのでは,持続的活動が不可能となるのは言うまでもない。また,個別経営主体のみが潤い,地域経済循環が形成されないのであれば,地域活性化のツールとしてのグリーン・ツーリズムの意義の大半は失われてしまうだろう。本章では,まず,高知県におけるグリーン・ツーリズムとしての農家民宿を取り上げ,地域経済の視点から見た経済性の問題について検証を行う。 これまでグリーン・ツーリズムにおける経済性の問題は,概念的に語られることはあってもその裏付けとなると,非常に脆弱なものであった。そうした中で,