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74 高知論叢 第92号 こうした地域経済への波及効果を具体的に図示したものが,図9である。この事例では,農家民宿開業前は,農林業収入400万円,所得210万円であった経済主体が,農家民宿開業後,農林業収入は275....

74 高知論叢 第92号 こうした地域経済への波及効果を具体的に図示したものが,図9である。この事例では,農家民宿開業前は,農林業収入400万円,所得210万円であった経済主体が,農家民宿開業後,農林業収入は275万円,所得148万円に減少するものの農家民宿収入600万円,農家レストラン収入350万円が加わり,最終的に農林業関係収入1225万円,所得530万円,開業前に比べて320万円の所得が増加している。ここで見逃してはいけないのが,地域経済への波及である。地域経済に対して農家民宿や農家レストランの食材やその他サービスの購入で195万円の経済取引が新たに生まれ,さらにパート雇用が発生し,所得として36万円が生み出されているのである。これらの効果だけでも231万円の波及効果が生まれている。 このように,農家民宿は従来の農業生産に比べ地域内調達が非常に高く,従来,地域外に流出していたマネーを地域に取り戻す機能を備えていることがわかる。 では,H12年中山間地域産業連関表( 資料3) 30を用いて農家民宿が地域経済に与える効果を検証してみよう。今回,高知県における代表的な3つの農家民宿に経営実態調査とヒアリング調査を行い,農家民宿における地元調達率について調べた。表1は食材の地元調達率についてまとめたものである31。これを見ると,中山間地域における平均的な農業自給率に比べて,農家民宿における地元調達率の方が,非常に高く地元調達率は96.5%を示し,大部分が地元で調達されたものとなっている。表1 食材の地元調達率の比較農家民宿(3事業者平均)中山間地域産業連関表農業自給率地元調達率96.5% 55.4%30 H12年高知県産業連関表( 16部門) をもとに,ノンサーベイ法により推計した。町内生産額の推計は,『市町村民所得統計』の町内総生産を案分指標としている。移輸出率,移輸入率については,高知県の値を初期値として与え,SLQ 法によって移輸入を調整し,最後にRAS 法にてバランス調整を行っている。作成方法の詳細については,以下HP にて掲載している。http://iii.cc.kochi-u.ac.jp/nakazawa/data/index.html31 サンプル数が少ないため,ここでは3事業者合計の数値を示す。地元の生産農家から直接購入したものだけでなく,地元の商店から購入したものを含むため,実際の地元調達率は下がる可能性があるが,ヒアリングの結果と照らし合わせると,少なく見積もっても9割程度は地元調達していると考えられる。