092号

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76 高知論叢 第92号 では,この食材の地元調達率の高さはどの程度,経済波及効果を地域内にとどめる効果があるのだろうか。上記の結果をもとに,産業連関表を用いて推計した結果32が,表2( 中山間地域の自給率)....

76 高知論叢 第92号 では,この食材の地元調達率の高さはどの程度,経済波及効果を地域内にとどめる効果があるのだろうか。上記の結果をもとに,産業連関表を用いて推計した結果32が,表2( 中山間地域の自給率) と表3( 農家民宿の自給率) である33。 表2は,中山間地域の自給率を用いて1億円の直接効果( 農家民宿の売り上げ) があったと仮定して経済波及効果を推計したものである。これによると,実際,地域内で発生する需要の増加は4500万円で,5500万円はこの段階で地域外へ漏れてしまっている。この4500万円がもたらす,経済波及効果は直接効果,第1次波及効果(原材料取引経由),第2次波及効果( 所得効果経由) を含めて,6600万円となる。 表3は,農家民宿の自給率を用いて1億円の直接効果( 農家民宿の売り上げ) があったと仮定して経済波及効果を推計したものである。これによると, 実際, 地域内で発生する需要の増加は4900万円で,この時点で地域外への漏れが400万円改善している。さらに, この4900万円がもたらす, 経済波及効果は直接効果, 第1次波及効果( 原材料取引経由), 第2次波及効果( 所得効果経由) を含めて, 7100万円となり,最終的に地域外への漏れが500万円改善できていることがわかる34。 さらに,産業別の効果を見ると,運輸・通信・放送(1600万円),農業(900万円),32 自給率の改善は経済構造の変化をもたらし, 産業連関モデルにおける生産波及経路等に大きな変化が生じる可能性がある。ここでの効果測定には, こうした構造変化を考慮せず,最終需要の増分にかかる自給率(I-M)についてのみ,変化したものとしてとらえている。使用した均衡産出高モデルは,X1=( I - ( I - M )A)-1{ ( I -M ) Fd+Ex} X2= ( I - ( I -M ) A)-1 ( I -M)ckwX1 X=X1+X2である。産業連関分析を行う際には,観光にかかる消費額が各地域内における需要増加額に結びつくかを評価する必要があり,結びつかないと判断されるもの(地域外での消費,地域外産品の消費)は除外する必要がある。今回の事例の場合は,地域外産品の消費額を把握する資料がないため,各々の部門の地域内自給率を乗じて需要額を推定する方法をとっている。33 消費客の消費支出構造については,グリーン・ツーリズム観光客を対象とした調査結果は残念ながら今のところない。そのため高知県観光部観光振興課『観光動態調査』をもとに,県外客の消費動向を参考に作成した。県外客が高知県内で消費した,交通費,宿泊費,飲食費,土産費( 耕種農業,食料品製造業) について産業別に配分を行っている。土産費については,野菜や加工品を対象として耕種農業と食料品製造業の中間投入率で需要を配分している。高知県における一般的な観光消費モデルであるため,当然ながら,グリーン・ツーリズムにおける消費構造と異なる可能性があり,今後,精査する必要がある。34 この試算では農業部門における自給率改善のみ推計しているが,我々の行った経営実態調査の結果からは,商業やその他のサービス( 対事業所サービス) においても同様の自給率の改善が見られることを確認している。 当然ながら, この点を勘案するとさらに改善効果は高まる。