092号

092号 page 81/132

電子ブックを開く

このページは 092号 の電子ブックに掲載されている81ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
持続可能な都市農村交流拠点( 農林漁家民宿) のために79金融・保険(800万円),製造業( 700万円),商業( 600万円),その他のサービス( 600万円) と,農家民宿の経済活動が様々な産業に経済波及効果をもたら....

持続可能な都市農村交流拠点( 農林漁家民宿) のために79金融・保険(800万円),製造業( 700万円),商業( 600万円),その他のサービス( 600万円) と,農家民宿の経済活動が様々な産業に経済波及効果をもたらしている様子がわかる。 これまで見てきたとおり,グリーン・ツーリズムとしての農家民宿は,原材料調達等をほとんど地元で調達しており,その結果,地域経済循環を高める機能を持っていることがわかった。経済効果が地域外へ漏れていってしまう高知県の経済体質にとっては,規模は小さいながらも,こうした地域経済循環を高めるような仕組みは非常に有意義であろう。また,直接関わる経済主体のみならず,取引を通じて多くの経済主体に影響を及ぼし,地域経済に貢献する点も特徴である。農家民宿によって地域外から獲得したマネーを地域内でうまく経済循環させることで,地域経済への貢献を果たしており,地域経済から見た経済性について役割を果たしていると言える。 2.価格の決定権=原価計算の必要性 農家民宿が地域経済への貢献を果たす,あるいは果たす可能性を持つためには個々の経営が成り立ち,継続していかねばならない35。 グリーン・ツーリズムの経済活動と農林業の最も大きな違いは,「価格を自分で決めることができる」ということである。 農林業では,原価に基づいて農林業者自らが販売価格を決定するという考え方は一般的でない。農産物で原価計算を行った場合,昨今の農産物価格水準では心穏やかでいられないからだろうか。というよりも, 農産物の通販・直販のような一部の例外を除いて価格が他者に決められてしまう流通の仕組みの中では,むしろ原価を考えること自体に意味を見いだしにくいというのが実情だろう。 そこからは,生産者が意思決定権を持てない今の流通システムの中で本来農林業にあるはずの「達成感や充実感」が奪われてきた経緯も浮かび上がってくる。こうしてみるとグリーン・ツーリズムは,国内外の「 流通」 に翻弄されてきた農35 WAN研究所( 2007b) p. 12では,「体験,交流といったケースでは女性たちのボランティア的働きに寄りかかっていることも多く,今後の発展を望むのならば,事業が継続できるような構造に変えていかねばなりません」と指摘されている。