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84 高知論叢 第92号(6)損益分岐点 いくつかの事例からは,体感労働時間にしても一定の労賃が得られる損益分岐点がおぼろげながら明らかになっている。つまり目標収入や目標宿泊客数などが設定できるようになる40....

84 高知論叢 第92号(6)損益分岐点 いくつかの事例からは,体感労働時間にしても一定の労賃が得られる損益分岐点がおぼろげながら明らかになっている。つまり目標収入や目標宿泊客数などが設定できるようになる40ということである。 損益分岐点分析によって採算性に問題ありとなった場合,単純に考えれば,収入を伸ばすか,経費を切り詰めるかである。 しかし,ここでも一般の「業」と違うグリーン・ツーリズムならではの判断が出てくる。 農家民宿開業の動機でもあり目的でもある「人との交流の充実感」や「農林漁業の継続」を大切にするとなれば,ただ人数を伸ばせばいいということにはなりにくい。農家民宿の受け入れ適正規模がおのずと決まり,そこから宿泊料金を検討することになりそうである。 実際の分析・見直しの場面で印象的だったのは,「自給食材率を上げてコストダウンを図ろう」,「宿泊料金の見直し( 値上げ) に耐えるホスピタリティ充実を」という民宿経営者の方々の姿勢である。昨今の「食」や「サービス」不信の時代にあって,これがグリーン・ツーリズムの素晴らしさではないだろうか。(7)シート全体について 本シートは手軽さに重きを置き,構成は極力単純にした。したがって,利用者がカスタマイズすれば農家民宿だけでなく農林漁業体験料金の設定にも対応が可能である。 一方,棚卸しも直接費間接費の区別もなく,厳密な意味での「原価計算」から見るとかなり大雑把な構成となっている点についてはお許しをいただきたい。科目や経費の分類等についても今後もかなりの検証が必要であるので,御助言ご指摘をいただければ幸いである。40 筆者の経験では, 宿泊客が100人を超えるあたりから, にわかに経営者の方が採算性への関心を示し始める感触がある。赤字が無視できない金額になるのがこの時点なのであろうか,実践者の経営感覚はもちろん,前述した「社会性重視」の中にひそむ「本音」を考えるうえで非常に興味深い。