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8 高知論叢 第93号間調査報告を行ったが,火災保険料などの取り過ぎは約10万件超,約60億円になった。最終報告は2008年 7 月に出そろったが,損保26社で153万件,金額で371億円にもなった。新しい建設工法にともな....

8 高知論叢 第93号間調査報告を行ったが,火災保険料などの取り過ぎは約10万件超,約60億円になった。最終報告は2008年 7 月に出そろったが,損保26社で153万件,金額で371億円にもなった。新しい建設工法にともなう多様な割引制度があることが,営業現場に不徹底だったという。 以上,新聞報道を基に簡単に事実経過を整理してきたが,これをみても今回の不祥事がいかにひどいものであったかが分かる。 第 1 に,不払いや未払いの件数そして金額は巨額であり,これにほとんどの会社が関わっていたことである。一部の会社の不祥事ではなく,生命保険会社や損害保険会社全体の構造的な体質問題だった。これらによる社会的損失は甚大である。 第 2 に,これらの異様な事態を招いた原因は,保険会社がひたすら「死差益」という収益方法を追求し,契約者や消費者のことを軽視していたからである。「死差益」というのは,収入となる保険料と支出となる保険金の支払い差額が生み出す収益のことであり,保険会社は,詐欺的な手法や意識的・無意識的な方法で,この保険金の支払い額を引き下げようとしてきたのである。 第 3 に,保険会社は,保険契約にいろんな特約をつけ契約内容を複雑で理解困難なものにしておきながら,契約者が気づいて請求しないと支払わない請求主義に固執していたことである。なかには請求案内をあえてせず,知っていながら放置していた悪質なケースも多い。 契約相手の無知や無理解に乗じて儲けようとする行為は,アメリカのコモンロー(判例法)によれば, もっとも卑しむべき経済行為である(これについては紀国正典[2005]「 金融の公共性・国際公共性諸学説の検討( 3 )―貸手責任論と社会的責任金融(SRF)―」高知大学経済学会『高知論叢』第84号,2005年11月を参照)。 第 4 に,保険の社会的役割を否定する反社会的行為であったことである。保険の役割は,いざというときのリスク対策にその社会的使命がある。ところが病気や事故などに遭遇したときに必要なセーフティネット(安全網)である保険金の支払いを不当に拒否したのであるから,その罪は大きい。 第 5 に,組織としての自浄能力がまったく欠けていたことである。金融庁か