093号

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106 高知論叢 第93号における労働者の関与とコミットメントを高め,労使の協議を進める方針が示された。このことを受け,ブレア首相が「職場のパートナーシップ」にもとづく労使協調路線の枠組みを提言し,TUC も将....

106 高知論叢 第93号における労働者の関与とコミットメントを高め,労使の協議を進める方針が示された。このことを受け,ブレア首相が「職場のパートナーシップ」にもとづく労使協調路線の枠組みを提言し,TUC も将来的に共同決定へと展開することを期待する23ものである。 TUC によると,パートナーシップは,組織の成功に向けての共同の関わり,雇用の安定に向けた使用者の責任,QWL(労働生活の質。労働の人間化)に焦点をあてたものとして描かれている。つまり,労使の正当な役割の認識,双方がオープンであること,および組織のための将来計画の情報共有と話し合いについての使用者側の積極的な対応,付加的な価値,つまりパートナーシップが使用者・労働組合・従業員にとって重要な進歩をもたらすことについての共通理解にもとづくものである24。 このパートナーシップによる取り組みにより,今後,英国における雇用や少子高齢化などの社会的な問題解決のためにフレキシブル・ワークを機能させることができるかどうかが注目に値しよう。そのためには,まず短時間労働の選択の際に公正な労働条件がもたらされるように現状が是正されるか否か,また,労働者が積極的に短時間労働を選択できる環境づくりにおいて労使の見解が一致するかが鍵となるであろう。 最後に,TUC がフレキシビリティによる労働者へのマイナスを防止するにあたり,ひとつの拠り所としているのがEU 指令であり,その国内法制化であると考えられる。前述のような,労働時間指令(労働時間の週48時間規制,時間外労働の規制),パートタイム労働に関する指令(不利益扱いからの保護),期限付き雇用に関する指令(不利益扱いの防止)などは大枠で最低限の法律である。しかし,従来,法的規制の少ない労働環境のなかで,労使が対立しせめぎ合う方法で任意のルールを規定してきた経緯からみると,英国において法的な規制とパートナーシップによる対話こそが,労働側の柔軟な方針を支えていると考えられる。英国において,フレキシビリティの促進には,労働側には,労働に見合う賃金と,安定した雇用が危険にさらされることへの警戒があり,23 TUC(2002)Reaching Out, p. 17, 54.24 TUC( 2001)Changing Times p. 4