093号

093号 page 49/114

電子ブックを開く

このページは 093号 の電子ブックに掲載されている49ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
経営学分野における本社の定義及び関連諸事項に関する一考察47るが,本社と工場との関係はほとんど論じられていない。組織論における一つの盲点ともいえる。……われわれが日常『本社』という言葉をよく口にする。…....

経営学分野における本社の定義及び関連諸事項に関する一考察47るが,本社と工場との関係はほとんど論じられていない。組織論における一つの盲点ともいえる。……われわれが日常『本社』という言葉をよく口にする。……しかし,この『本社』という言葉は,案外不用意に,またあまりその意味を意識しないで用いられているのに気づくであろう。『本社』というのは, 漠然とした場所(本社事務所)を指しているのか。やはりフォーマルな組織なのか。組織とすれば, 部や課と同じ性質のものか。また本社の職能は何か。……」10と述べていることから,容易に推測できる。 小野の指摘は1957年のものであったが,それ以後1980年代初めまでのわが国における経営学分野の諸文献には,筆者の知る限り,本社の担う諸機能とその分類や, 本社と本社以外の諸事業所(または諸部門)との間の機能分担関係,そして本社の定義などに関して,まともに議論しているものはない。これはおそらく, 戦後以来1970年代に至るまで, 大半の諸企業においては本社と現業拠点(特に工場)とは(立地,組織,制度など様々な面において)未分化で,本社と現業拠点との間の諸関係などについて議論するための必要性も事例も乏しかったためであろう。その意味では,1957年という早い時期に,本社と現業拠点との間の諸関係に着目し,「本社とは何か」という問題について考察した小野の試みは,高く評価されるべきであろう。11第二項 1980年代半ばにおける本社機能分類 1980年代半ばの本社の諸機能の分類等に関する諸議論は,一方では高度成長期以来の重要な政策課題である東京一極集中問題のさらなる顕在化・深刻化に関し,わが国諸企業の本社機構の肥大化と東京への集中立地が当該問題の中核的諸要因の一つであると認識されるようになってきたことや,当時急速に発達しつつあった交通・情報通信インフラが,地方から東京への本社移転の必要性を緩和したり,東京から地方への本社の部分的移転を可能にするなど,当該問題の解決の糸口になるのではないかという期待が高まりつつあったという背景のもとに,他方ではわが国諸企業の巨大化に伴う事業部制採用の増加と本社の位置づけの変化との関係に注目し,日本経済調査協議会(1984)12及び宮川・和田(1985)1(3 第4表),河野(1985)1(4 第5表)らによって行われた。