093号

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現代ドイツの地域間格差是正政策に関する一考察65といった行政区分で地域をとらえる場合もあれば,後述する空間整備政策のように,州より下のレベルで,空間整備を進めるための整備地域で把握する場合もある。しかし....

現代ドイツの地域間格差是正政策に関する一考察65といった行政区分で地域をとらえる場合もあれば,後述する空間整備政策のように,州より下のレベルで,空間整備を進めるための整備地域で把握する場合もある。しかし,地域とは何か,という問題は,本稿では手に余る課題である。1本稿は行財政運営における地域間格差を主題とするために,さしあたり州レベルにおける地域間格差について検討する。 まず,地域間の経済格差の状況をみる。表1は,2007年のドイツ各州の州内総生産について比較したものである。州内総生産と人口の構成比の関係についてみてみると,旧州(旧西ドイツの州)は,州内総生産が人口を上回っているが,新州(旧東ドイツの州)は州内総生産が人口を下回っている。2 新州は旧州に比べ人口が少なく,面積も狭いため,経済規模の大きさには1990年の統一時から格差が存在していた。しかし,新州の州内総生産の構成比が人口の構成比との関係で下回っているということは,ドイツ全体で見れば,旧州に経済活動の集中が生じていることを示している。また,人口一人当たりの州内総生産の比較でみれば,新州はドイツ全域の7割の水準であり,ドイツ統一後15年以上経過してもなお,東西格差是正が課題となっている状況がみてとれる。 統一後の東西格差の状況は依然として解消されていないが, その一方で,東ドイツ地域の経済成長にともなって,格差の幅は大きく縮小してきている。1991年には新州の人口一人当たりの州内総生産は全国平均からみて38.2の水準であったが,2007年には71.6の水準にまで上昇している。このような格差縮小傾向を背景にして,東西格差の問題は,統一にともなう特殊事情から,「一般的格差」化の問題へと移行しつつある。3 東西格差の「一般的格差」化という状況は,地域間格差に対する見方をより複雑なものとする。4 第二次大戦後旧西ドイツでは,地域政策の枠組みの中で,当初地域間格差は都市と農村間の格差として考えられていた。そして1970年代1 地域をどのようにとらえるべきかという問題については,さしあたり中村[2005],第1章を参照。2 以下特に断りのない限り,ベルリン州は新州に含めていない。3 武田[2008],199 ページ。同論文では,2004 年度の域内総生産を日本とドイツで比較してみると,ドイツにおける東西間の経済格差の度合いは日本における地域間格差の度合いとほとんど変わらない水準となっていることが指摘されている。4 Strubelt[2006],S. 307.