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現代ドイツの地域間格差是正政策に関する一考察67から,重工業の衰退と南部地域におけるサービス業の成長という産業間格差を背景としたいわゆる「南北格差」が問題とされるようになる。また,それまで後進地域として....

現代ドイツの地域間格差是正政策に関する一考察67から,重工業の衰退と南部地域におけるサービス業の成長という産業間格差を背景としたいわゆる「南北格差」が問題とされるようになる。また,それまで後進地域として見られてきた農村地域についても,それぞれ多様性を持つ存在であり,都市郊外や観光業のある農村地域は中核都市よりも発展している例もあることから,単純な都市・農村間格差の縮小を政策目標とすべきではないということも合わせて指摘されるようになった。ドイツ統一はこうした西ドイツ地域内での格差に加えて,新たに東西格差という対立軸をもたらすことになった。しかし,EU拡大と経済のグローバル化の進展,東ドイツ地域の経済成長は,東西ドイツ地域を問わず,一方ではグローバル化によって成長傾向にある地域があり,他方では体制移行にともなう問題や産業構造転換にともなう問題を抱える地域がある,という状況を生み出している。 ドイツ統一後における主要な政策課題は東西格差の縮小であったが,ある程度の東西格差の縮小が進展してきている今日では,東ドイツ地域と共通の課題を抱える西ドイツ地域の経済的後進地域にも焦点が当てられるようになってきている。また,東西間の共通性が浮かび上がる一方で,東ドイツ地域内の格差拡大の兆しが見られるようになってきた。例えば,2006年の失業率で見れば,最高のメクレンブルク?フォアポンメルン州は19.0%,最低のテューリンゲン州は15.6%である。5 東ドイツ地域内でも「南北格差」といえるような状況が生じている。 もとより西ドイツ地域との対比でみれば,全体として東ドイツ地域は同質的であり,東ドイツ地域全体の状況を改善することがドイツ全体の政策的な課題であり続けている。しかし,東ドイツ地域内での不均衡は,ドイツ基本法において規定されている生活関係の同等性を保障するという点からすると,統一以後著しく拡大してきている。6 東ドイツ地域での地域間格差は, 税収力の格差などに関係してくることで,州財政にも反映している。そこで,州財政の現状に焦点を当てて,東ドイツ地域の地域間格差を検討する。5 2006年のドイツ全体の失業率は10.8%,その他東ドイツ地域については,ブランデンブルク州17.0%,ザクセン州が17.0%,ザクセン-アンハルト州が18.3%である。西ドイツ地域(ベルリン州を除く)については,最高がブレーメン州の14.9%,最低がバーデン-ビュルテンベルク州の6.3%であった(Statistisches Bundesamt[2007],S. 72)。6 Schadlich[2006],p. 10.