093号

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76 高知論叢 第93号セン-アンハルト(ST),テューリンゲン(TH)のグループ,もう一つは,ブランデンブルク(BB)とメクレンブルク-フォアポンメルン(MV)のグループである。この二つのグループは,前者は東ド....

76 高知論叢 第93号セン-アンハルト(ST),テューリンゲン(TH)のグループ,もう一つは,ブランデンブルク(BB)とメクレンブルク-フォアポンメルン(MV)のグループである。この二つのグループは,前者は東ドイツ地域の南部,後者は北部と,地理的には大きく南北に分かれている。 前者の南部地域のグループは,製造業が一定の大きさを持っていることが特徴である。西ドイツ地域には及ばないものの,それぞれ製造業が全体の約20%を占めている。また,ザクセンは金融・不動産・事業所向けサービスが27.4%と大きく,東ドイツ地域における金融の中心的機能を担っていることも推察される。 一方で後者の北部地域のグループは,製造業の弱さと,サービス業の高さが特徴としてみてとれる。そしてサービス業の中でも行政サービスの割合が高く,企業部門の弱さが政府部門の役割を比較的大きなものとしている。またメクレンブルク-フォアポンメルンは,農林漁業の割合が少し高いことも特徴としてあげることができる。北部地域のグループは,人口密度がやや希薄で,農村的な地域経済構造であるというイメージが持たれる。 各州の産業構造の相違は,失業率や家計・法人の所得に反映し,税収格差などを通じてそれぞれの財政状況に影響を与える。南部地域の製造業の優位さが,旧東ドイツ地域での失業率や財政状況での南北格差を生み出す要因となっている。現在見られる旧東ドイツ地域の産業構造は,旧東ドイツ時代からの歴史的経緯によって規定されてはいるが,統一後も人口流出や国有企業の民営化,サービス経済化の進展などを通じて,旧東ドイツ地域における地域間格差の拡大に影響を与えている。1111 森川[1995],第Ⅳ章によると,旧東ドイツでは人口の希薄な北部・中部と工業の発達した南部との間には地域間格差が大きく,その規模は旧西ドイツの南北傾斜以上であったということである。また,旧東ドイツの地域生産力の大きな差異を助長したのは,産業の地域的集中と単一構造にあったことも指摘されている。その結果,同書第Ⅸ章によると,本来ドイツの工業地域として伝統的な地位を保持してきた南部工業地域へは,統一後に西側企業の投資も比較的活発に行なわれているのに対して,中部・北部は本来農業地域であるにもかかわらず,地域間の均衡を図る地域政策の中でかなり無理をして工業化していたため,社会主義崩壊後は急速に衰退せざるをえなかったということである。