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84 高知論叢 第93号イツ地域内部における開発地域相互間の結合の強化を図ることで,ベルリン中心主義の打破と分散的空間構造確立を目標とした。また,農村地域についても,農業構造の改善と,中小企業主からなる中....

84 高知論叢 第93号イツ地域内部における開発地域相互間の結合の強化を図ることで,ベルリン中心主義の打破と分散的空間構造確立を目標とした。また,農村地域についても,農業構造の改善と,中小企業主からなる中流階級の振興および大都市圏の人々に対するレクリエーション機能の充実を図ることも必要とされた。 「新連邦州のための空間整備方針」は,東ドイツ地域における都市を供給機能と経済成長の中心地として発展させることを方向性として打ち出している。しかし,ドイツの空間整備政策の核をなしている中心地計画の評価としては,現在では強い批判にさらされている状況がある。23 例えば,中心地計画は,空間整備にとってまったく効果がなく,インフラや公的サービス供給の中心地への持続的集中によって村落を荒廃させた元凶である,という指摘がある。また,中心地計画を肯定的に評価する立場でも,中心地計画を欠く他国の農村と比較すると,農村からの人口流出の阻止に貢献したといえるが,中心地計画の効果を証明するのは困難である,ということである。いずれにせよ,都市と農村,工業と農業の対立を背景として,経済の持続的成長期やインフラの持続的整備期には中心地計画の現実的な妥当性が存在していたが,その後サービス経済化が進展する中で,旧来型産業中心の都市とサービス業や先端産業を抱えた都市との間の不均衡のように都市の間でも格差が生じている現在では,中心地計画によって均衡的な国土構造の発展を目指す政策の有効性については合意がとりにくい状況がある。 そこで,中心地計画における中心地は,供給面での機能よりも,地域発展の中心としての機能が重要なものとして考えられるようになってくる。24 「新連邦州のための空間整備方針」は,とりわけ西ドイツ地域との関係において東ドイツ地域を発展させるための条件整備をする必要性から,交通や都市機能,自然環境の回復など,住民生活や経済活動にとって基礎的なインフラ整備を重点にすえていた。しかし,統一後15年が経過し東西格差が一定縮小したところで,空間整備の目標としては,東ドイツ地域の高失業を解消するための経済発展のための戦略が前面に出てくることとなる。23 森川[2003],60 ページ。24 同上。