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現代ドイツの地域間格差是正政策に関する一考察85 例えば,連邦建設・空間整備省発行の2005年度版『空間整備報告』に関する連邦議会報告の中で,次のような認識が示されている。25 すなわち,ドイツの空間発展戦略....

現代ドイツの地域間格差是正政策に関する一考察85 例えば,連邦建設・空間整備省発行の2005年度版『空間整備報告』に関する連邦議会報告の中で,次のような認識が示されている。25 すなわち,ドイツの空間発展戦略は3つの大きな軸からなっている。それは,①公的な生存条件保障,②地域の成長ポテンシャルの強化,③空間利用の管理である。とりわけ,②の中で,「生活関係の同等性」の目的を新しく解釈し直すべきことが提起されている。これまでは,連邦領域での生活条件の均衡を主目的としており,各地域に対して同じような地域開発政策を行なっていた。すなわち,中心地までの到達距離や,公的施設や公的サービス供給の拠点の配置など,インフラの整備には有意義なものであったが,産業立地的な観点を欠いているという点で不十分なものである。そこで,空間整備の目的は,今後は地域の潜在的な経済成長の条件を支援することや,地域の発展の障害を克服することを目的においた支援へと転換されるべきである,という認識が示される。その際に,人口の集積地域や,周辺地域など空間的条件の相違を考慮すべきで,特にメトロポール地域・大集積地域 26 を経済成長の機関車とし,国際的に競争力を持った地域とすることを目標においている。 連邦政府の報告にみられる「生活関係の同等性」の修正についての提案は,経済のグローバル化とEU 統合による国際的な競争の中でドイツ経済はどうあるべきか,ということが背景にある。また,財政状況が厳しい中で,人口減少と高齢化の進行にともなって,より一層必要性が高まっている公的サービス供給を維持していくためにも,財源を経済成長のために効率的に配分していくことを目指している。連邦政府の基本的立場としては,政策立案の背景となる様々な条件の変化に対応しつつ,「生活関係の同等性」という理念についてはできるだけ維持しようと努力する,というものであろう。 そして,連邦政府の報告では,東ドイツ地域の集積地域や成長地域において25 Deutscher Bundestag[2005],S. 15?18.『空間整備報告』は,不定期に発行され,地域に関する空間的な変化や展望についてまとめられているものであり,ドイツ全体の空間整備政策の方向性を基礎づけるものである。26 メトロポール地域とは,ヨーロッパの中で競争上優位な地位を占めることのできる条件を持つ成長空間と位置づけられている。東ドイツ地域では,ベルリン-ブランデンブルク首都地域,ハレ/ ライプチヒ/ ザクセンの三角形地域などが候補として挙げられている(Informationen zur Raumentwicklung[2006],S. 708)。