093号

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88 高知論叢 第93号ありつつも,公的な生活条件の保障のために依然として空間整備政策における中心地計画は不変の妥当性を持つこととなる。連邦政府にとって,中心地計画は今後も,とりわけインフラ整備の基本に据....

88 高知論叢 第93号ありつつも,公的な生活条件の保障のために依然として空間整備政策における中心地計画は不変の妥当性を持つこととなる。連邦政府にとって,中心地計画は今後も,とりわけインフラ整備の基本に据えられるべきものとして考えられている。32 連邦政府としては,空間整備政策の目標の重点を経済成長に移しつつも,旧西ドイツ以来の均衡的な発展という目的も依然として維持していこうとしている。旧西ドイツの空間整備政策は,都市と農村の格差を是正するという目的から農業構造改善政策と経済成長の媒介項の役割を果たしてくる中で,農村地域の経済的側面だけでなく,社会的・文化的側面の充実をも目指してきたといわれている。33 連邦政府としては,旧東ドイツ地域の経済発展を拠点開発方式によって行うことで,生活関係の同等性を守るための財源を確保するという意味において,均衡目的から経済成長目的へと空間整備政策の目標の現代化を図りつつ,統一後の連邦領域においても理念を維持していこうという努力を行なっているようにみえる。 東ドイツ地域の南北格差は,ドイツにとっては古くて新しい問題,という両面性を持っている。新しい問題としては,現在ドイツ全体でみると人口が急減する過疎地域は現在ほとんど存在しないといわれている中で,東ドイツ地域の農村部だけが人口の急減にともなう過疎化が急速に進行しているということである。34 古い問題としては,第2次大戦後の旧西ドイツの南北格差問題の再来ともいえる。第2次大戦後の旧西ドイツは,現在の南北格差とは逆の意味での南北格差を抱えていた。すなわち,歴史的に旧西ドイツ南部地域は工業化の遅れた農村地帯であり,北部地域のほうが工業化を進めていたということである。第2次大戦後の南北格差については,南部地域,特にバイエルン州がアメリカ占領地域になった影響もあり,多くの戦後復興のための財源が投下されることで,結果的に南部地域の経済発展が促され,解消されることになった。35 一方,32 Deutscher Bundestag[2005],S. 18.33 祖田[1997],第7 章では,日本と西ドイツの農政および空間整備政策の比較を通じて,西ドイツの農業政策は経済的側面だけではなく社会的・文化的側面の充実をも図っていたのに対して,日本は農工間の経済的均衡だけを目指してきたということが指摘されている。34 森川[2004],56 ページ。35 バイエルン州の第2 次大戦後における経済発展の原動力は,ジーメンスに代表される大企業が立地を進めたということが主な要因である。しかし,戦後なぜ大企業,特にジー