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90 高知論叢 第93号るための取り組みは維持されている。しかし,地域開発政策の重点を経済成長に移すべきであるという圧力に対して,均衡的な発展を目的とする政策的な努力をどこまで保つことができるのか,という....

90 高知論叢 第93号るための取り組みは維持されている。しかし,地域開発政策の重点を経済成長に移すべきであるという圧力に対して,均衡的な発展を目的とする政策的な努力をどこまで保つことができるのか,ということが今後のドイツには問われている。 そもそも,「産業クラスター」に代表される拠点開発方式を採用するならば,具体的な対象としては東ドイツ南部地域の産業集積の支援を念頭に置くことになる。南部地域は,産業集積の基盤を生かして,東ドイツ地域の中でも多くの投資を西ドイツ地域や諸外国から受け入れている。投資をする主体という視点から見れば,「産業クラスター」支援政策は,とりわけ西ドイツ企業の立地環境の整備し,後押しをしていくという側面も持つことになるだろう。産業立地論的な観点からの空間整備政策のあり方については,重要な論点ではあるが,本論文の課題を大きく超えるものであり,今後の研究課題としていきたい。 最後に注意をしておかなければならないのは,均衡的な発展を目的とする意味での「生活関係の同等性」の理念は,必ずしも後退しているばかりではない,ということである。例えば, ドイツはEU の一加盟国として,EU と様々な財政関係を持っている。EU の農業政策や構造基金など, 特に東ドイツ地域は全域においてEU からの資金を受け入れており,多層にわたる政府の地域政策の恩恵を受けている。一国単位の枠組みの上位にEU という組織が存在していることが日本と違うヨーロッパ諸国の特徴であり,多段階の政府レベルの財政的な重なり合いから, 東ドイツ地域の分析を行なうことも必要である。EU との財政関係については,今後の課題としていきたい。参考文献伊東弘文[1999]「『社会国家』と『生活関係の統一性』」(坂本忠次・和田八束・伊東弘文・神野直彦編『分権時代の福祉財政』敬文堂)植田浩史[2004]「産業集積の『縮小』と産業集積研究」(植田浩史編著『「縮小」時代の産業集積』創風社)霜田博史[2004a]「現代ドイツ州間財政調整の意義と限界」『経済論叢』第173巻第4号霜田博史[2004b]「ドイツ統一後における垂直的財政調整の展開」『経済論叢』第174巻第3号