094号

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100 高知論叢 第94号面の考察も必要である。たとえば現地法人の新設でも,その目的や形態が異なれば,企業の生産体制の変化に対して持つ意味は異なってくるであろう。 本節では,欧州における日本企業の生産体制の....

100 高知論叢 第94号面の考察も必要である。たとえば現地法人の新設でも,その目的や形態が異なれば,企業の生産体制の変化に対して持つ意味は異なってくるであろう。 本節では,欧州における日本企業の生産体制の変化をより具体的に考察することを試みる。ここでは,上述のように,現地法人の新設・閉鎖に止まらず,生産機能の一部移転などより広い範囲の生産体制の変化について考察する。また,それぞれの生産体制の変化の特質についても考察を行うことにする。 本節では,「日刊工業新聞」の記事を用いて考察を行う。新聞記事には,生産体制の変化の全てを網羅しているわけではなく部分的な情報に過ぎないという問題,あるいは生産体制の増大に関する情報は多いが縮小に関する情報は少ないという問題など,さまざまな問題や限界がある。本節では,その点に留意しつつ,包括的な分析というより,事例研究的な分析として,検討を行うことにしよう。 今回は,第 2 節で取り上げた日本企業542社から,欧州全域(西欧と中欧)で活動を展開している96社(つまり①「2002年度に西欧と中欧の両地域で現地法人を所有している親企業56社」,②「2002年度に西欧のみに現地法人を所有し,2006年度には中欧にも現地法人を所有している親企業38社」,③「2002年度に中欧のみに現地法人を所有し,2006年度には西欧にも現地法人を所有している親企業 2 社」)を検討の対象とした。 これら96社の生産体制の変化に関する情報を,「日刊工業新聞」の2003年 4 月から2006年12月までの記事から拾い上げた。その結果,57社に関して,生産体制の何らかの変化に関する情報109件を得ることができた(4)。この57社の内訳は,上記①の企業が29社,②の企業が27社,③の企業が 1 社である。 表 6 は,これら57社が,西欧と中欧で生産体制をどのように変化させたかを示したものである。先述のように,集められた情報には生産体制の増大に関するものが多い。とくに中欧での増大に関する情報が多く得られた。他方,生産体制の縮小に関する情報は,非常に少ない。ただし,西欧縮小・中欧増大に関する情報は比較的多く得られた。これは,後述するように西欧から中欧への生産移管が生じており,その場合,西欧の生産体制縮小が中欧の生産体制増大と合わせて報じられているためである。