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欧州における日本企業の生産体制の現状109中欧でも積極的に現地法人を増加させている場合が多かった。③中欧のみに現地法人をもつ企業は,西欧に新たに進出した企業はほとんどなく,また中欧においても現地法人数が....

欧州における日本企業の生産体制の現状109中欧でも積極的に現地法人を増加させている場合が多かった。③中欧のみに現地法人をもつ企業は,西欧に新たに進出した企業はほとんどなく,また中欧においても現地法人数が不変の現状維持的な企業が大半であった。つまり中欧における現地法人数の増加は,西欧に現地法人を持つ企業あるいは以前は欧州に現地法人を全くもっていなかった企業によって担われている。 第 3 節では,欧州全域で活動している日本企業の生産体制の変化に関して,現地法人数の変化に限定されない生産機能の移転などを含む意味での生産体制の変化について考察した。西欧における生産体制の増大の特徴は,現地企業の買収という形態が多いことであった。つまり,近年の西欧における生産体制増大は,自社の生産拠点の新設・拡張という単純なものではなく,現地企業の経営資源の獲得,さらにそれを自社の経営資源と結合して,新たな競争力を築くことを目的とするものが中心となっている。それに対して,中欧における生産体制の増大の特徴は,西欧からの生産移管を伴うものが多いことであった。一方,生産体制の縮小については,十分な資料を得られたとは言い難いが,西欧に関しては中欧への生産移管を伴うものが多く,また中欧に関しては縮小の事例は非常に少なかった。 第 4 節では,欧州における生産体制の変化の中で特徴的な生産移管について考察した。欧州域内での生産移管の多くは西欧から中欧への移管であり,国別では英国・ドイツ・南欧諸国からハンガリー・ポーランドなどへの移管が多く,業種別では電気機械・電子機器および同部品の移管が多かった。そして,そのような生産移管が行われた後の西欧生産拠点についてみると,閉鎖された場合と存続し中欧生産拠点と生産分業を形成している場合とが見られた。また,前者の場合でも,日本企業は西欧において研究開発拠点等を強化しており,より広い意味における欧州全域での企業内分業が形成されている可能性を指摘することができた。 本稿は,既存資料を整理し活用して,欧州における日本企業の生産体制の現状に関する,ごく簡単な表面的考察をしたものに過ぎない。次稿では,筆者が行った現地調査の結果に基づき,欧州における日本企業の生産体制と分業関係に関して,より具体的な検討を行いたい。