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金融機関の社会的責任活動(金融CSR)についての調査と評価(2007) 47いて専門的な学習はしないで,自分の足でまったくの第1歩から踏み出してもらった。そのことでより創造的な力量を鍛えられるであろうし,独創的な方法が生み出されるかもしれないからである。調査・評価活動に当たっての予備学習は,金融庁が調査した金融CSR事例を分類・整理した拙稿(下記参考文献)を学習し,自分が最も興味・関心をもった金融CSR 事例をそれぞれが選び出して報告し, 議論するという手順を踏んだ。それぞれが先進的だと考える事例を自分の価値観で選び出し,意見交流することによって,各自の評価能力を高めるためである。2) 銀行,証券会社,保険会社がどのような不祥事を引き起こし,どのようなことで金融庁から処分を受けたかについては,次の拙稿で簡単に紹介した。紀国正典[2008]「日本における金融CSRの現状と活動(3-1)―金融庁「金融機関のCSR実態調査」のCSR事例分析(証券会社等編)―」,紀国正典[2008]「日本における金融CSRの現状と活動(4)―金融庁「金融機関のCSR実態調査」のCSR事例分析(保険会社編)―」。3) わたしの金融論・国際金融論ゼミがこのような調査・評価活動に踏みきるきっかけは,演習形式の授業方法について課題探求型の教育方法の学習効果が高いとの,本学人文学部社会経済学科における教育実践である。課題探求型とは,ある課題を設定させ,その課題の解決のためにどのような方法がありどうすればいいのかを求めて,自分で調査し,自分で工夫・企画し,自分で必要な知識や情報を集めるよう指導する方法である。 これに触発されて金融分野においても,自分の生活にかかわりがあり,自分で体験できて対象や経過が目にみえ,その成果を実感できることによって,学習意欲を高めるであろう教育方法を実践してみたい,と思い立ったのである。そうして考え出した教育方法は,金融における何らかの課題(テーマ)を設定し,学生たちに実際に存在している金融機関を調査してもらい,自分の価値観や自分たちで議論して決めた基準で金融機関を評価するという方法であった(この経緯について詳しくは次の拙稿の注記参照。紀国正典[2005]「外貨建金融商品の販売方法についての調査と評価(2004)―高知市所在の金融機関の窓口調査結果の検討」pp. 60~61)。 このような調査と評価にさいしてどういう課題(テーマ)を考えるかであるが,最初はついでに社会的意義もあるようなものを設定してみたい,との軽い気持ちで踏み出した。ところがこのような教育実践に取り組むうち,この調査・評価活動が社会的責任金融教育としての内容も備えているのではないかと思うようになってきた。最初のうちは,社会的責任金融教育という意義は,副次的な意味でとらえていたのであるが,ますますこれをメインに据えてみようと考えるようになったのである。今回の調査と評価のテーマは,金融機関の社会的責任活動(金融CSR)であるので,社会的責任金融教育にはふさわしいものである。 社会的責任金融教育とは,一言でいえば金融における社会的責任意識を高めるような人材教育である。金融消費者についていえば,投資ゲームに走るのではなく,持続可能な社会に役立つ金融の視点から,資産・負債やリスクを自己管理でき,金融機関を評価・選択できる人材の育成である。金融職業人についていえば,持続可