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48 高知論叢 第94号能な社会に役立つ金融のあり方を考え実践でき,社会的リスク管理能力や意識が高く,プロとしての高度な職業的倫理意識をもち,情報公開に熱心であり,金融消費者に信頼され,その専門的知識によ....

48 高知論叢 第94号能な社会に役立つ金融のあり方を考え実践でき,社会的リスク管理能力や意識が高く,プロとしての高度な職業的倫理意識をもち,情報公開に熱心であり,金融消費者に信頼され,その専門的知識によって社会に貢献できる人材の育成である。 金融経済教育は,「貯蓄から投資へ」との政府の掛け声や金融機関が金融CSR 活動の一環として取り組んだことなどによって,盛んなものになっている。しかしこれらが,投資ゲームで金もうけをするための金融教育であったり,投機・借金地獄への入り口を準備する金融教育であったり,ライブドアや村上ファンドのように一獲千金の金もうけのためには不正な手段も平気である人間を作り出す金融教育であったり,金融機関の宣伝や収益チャンスを拡大するための金融教育(カモネギ教育:カモとなる金融消費者がネギをしょってくるように仕向ける宣伝教育)であったりしてはならない。社会的責任金融教育はこれらの金融教育とは対極にあるものである。このことについては,紀国正典[2006]「金融情報に対する金融機関の社会的責任意識の調査と評価(2005)―高知市所在金融機関のディスクロージャー誌とホームページの比較検討―」pp. 28~29。 森永卓郎氏は,教育評論家の尾木直樹氏との対談で,このような金融教育は不要だとして,次のようにいう。「金融教育が必要だという話が私のところによく来るんです。今のロスト・ジェネレーションの人たちにとっては,新興のIT 長者たちというのはヒーローなんですね。だから, 例えば, 学校教育の中で株式投資術を小・中学生に教えてくださいという話が来るんですけど,僕は根本から間違っていると言い続けているんです。要するに,小さい頃から,右から左に金を動かして,短期で濡れ手に粟の金を稼ぐというのを教えるなど言語道断だと思うんです。分別のないときにそういうのを覚えてしまうと,まともな人生を送らなくなっちゃうんですね。」尾木直樹・森永卓郎[2008]『教育格差の真実:どこへ行くニッポン社会』pp. 160~161(この文献箇所については妻裕子から教示を受けた)。 また,全国銀行協会主催(後援:金融庁・文部科学省・金融広報中央委員会)「シンポジウム:金融経済教育をいかに充実していくか」で,基調講演にたった生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏は,「私が金融界に期待することは,①目先の目標(商品やサービスのPR)を忘れ,公正・中立な立場での学習支援に徹して欲しいこと,」と厳しい注文をつけている。全国銀行協会『金融』2008年4月号,p. 20。4) 大学やマスコミもようやく,このような危機的状況に警鐘を鳴らすようになってきた。高知新聞社[2008]「企業の採用選考早すぎ:大学3団体是正要請」高知新聞記事2008年7月10日付け,NHKクローズアップ現代「内定ブルー:就職戦線に異変あり」2008年10月16日放映。5) 市民団体による次のような取り組みが最近報道されている。日本経済新聞社[2008]「銀行選び「環境基準」に,ネットで参考情報提供:NGO や自治体,預金者に働きかけ」日本経済新聞記事2008年7月9日付け。6) エコ金融商品やCSR関係金融商品について最近の報道は,日本経済新聞社[2008]「「洞爺湖」にらむ環境金融(下)エコ預金の開発加速:地域が主導,大手沈黙」2008