094号

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74 高知論叢 第94号は存在感を次第に失ってしまうのである4。 筆者が分析の対象としてきたDSC は, 大きな分類としてレンズ一体型DSC(以下,C-DSC)とレンズ交換式デジタル一眼レフ(Digital Single Lens Reflexc....

74 高知論叢 第94号は存在感を次第に失ってしまうのである4。 筆者が分析の対象としてきたDSC は, 大きな分類としてレンズ一体型DSC(以下,C-DSC)とレンズ交換式デジタル一眼レフ(Digital Single Lens Reflexcamera:以下,D-SLR)のふたつの製品セグメントに分けることができる5。D-SLRはインテグラル型とすることが多いが, 世界のDSC 市場において, 出荷台数ベースで90%以上を占めるC-DSCはモジュラー型とすることが多い6。わたしはこの状況に強い関心を覚える。なぜ, 他のデジタル情報家電と同じくDSC もモジュラー型の製品アーキテクチャであるにもかかわらず,世界市場において競争力を発揮し続けているのだろうか。DVD プレーヤーに代表されるモジュラー型製品で日本企業が弱い分野と,DSC を代表とするモジュラー型製品でも日本企業が強い分野との間にある違いは,どこから来るのだろうか。本稿では,この疑問に答えてみたい。4 延岡[2006]77-78ページを参照。なお,(1)トータルコストの低さでは中国企業,(2)グローバルな仕組みづくりではソレクトロン(米国企業)とクオンタ・コンパル(台湾企業),(3)プラットフォーム・リーダーとしての位置取りではインテルとマイクロソフト(米国企業)を例に挙げている。また,藤本[2007b]では,「あくまで筆者の印象論的な予想」として,「統合力の日本:オペレーション重視の擦り合わせ製品」,「表現力の欧州:ブランド重視の擦り合わせ製品」,「構想力のアメリカ:知識集約的なモジュラー製品」,「集中力の韓国:資本集約的なモジュラー製品」,「動員力の中国:労働集約的なモジュラー製品」と端的に表現している(同[2007b]425-427ページを引用)。5 カメラ映像機器工業会[2008]によると,総出荷台数100,367千台(2007年)のうち,C-DSCは92,899千台であり, 約92.6%を占めている。ただし, 総出荷金額になると,2,060,531百万円(2007年)のうちD-SLR が445,100百万円であり,約21.6%を占めるようになる(以上,同[2008]19ページを参照)。なお,カメラ映像機器工業会のデータ集計は,日本企業を中心とする会員企業に限られているため,図 1 の総出荷台数より少なくなる。ところで, レンズ一体型DSC のほとんどがコンパクトタイプであるため, 本稿ではレンズ一体型DSC をC-DSC とする。6 33社254製品に関するアーキテクチャの測定を行った大鹿・藤本[2006]によると,DSC はインテグラル・アーキテクチャ度の低い製品に分類されている(同[2006]14-15ページ,表 3 を参照)。ただし,インテグラル・アーキテクチャ度の数値が低い製品の中では,インテグラル・アーキテクチャ度が高い。また,表 3 をよくみると,モジュラー型と思われていた製品でも,インテグラル・アーキテクチャ度が高い製品に分類されている。この理由として,「アーキテクチャとはそもそも『設計思想』のことであるから,主観的な要素がからむ」という点を挙げられる(同[2006]15ページを参照)。加えて,日本企業に対するアンケート調査であることも影響しているかもしれない。新宅[2005]が指摘するように,「製品によって異なると同時に,同じ製品でも,時代や場所によって違って」くるのだろうし,企業によっても異なるのだろう。