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競争次元の高度化と日本デジタルスチルカメラ産業の国際競争力(1) 75 こうした問題関心は決して新しくない。延岡・上野[2005]は,モジュラー型製品において競争力を発揮すると考えられていた中国企業を分析対....

競争次元の高度化と日本デジタルスチルカメラ産業の国際競争力(1) 75 こうした問題関心は決して新しくない。延岡・上野[2005]は,モジュラー型製品において競争力を発揮すると考えられていた中国企業を分析対象にして,モジュラー型製品であっても,中国企業が競争力を発揮する製品(DVD プレーヤー,デスクトップPC)とそうでない製品(ノートPC,DSC)が存在することに関心を寄せた7。そして,モジュラー型製品において,中国企業が競争力を発揮するための条件として,(1)部品技術が比較的に安定して技術変化が少ないこと,(2)市場・顧客ニーズが単純であることを挙げている8。逆に言えば,日本企業が中国企業を競争相手と考えた場合,部品技術が変動し,技術変化が激しく,さらに単純に数字で表すことができない商品コンセプトやブランドが重要になるならば,モジュール型製品といえども,競争力を発揮できる余地が残されていることを示している9。 この議論を一歩進めると,部品技術が変動し,技術変化が起こる理由は,性能と機能のグレードアップが急速に行われるからであろう。DSC 産業では急速な性能と機能のグレードアップを伴った競争次元の高度化が起こった10。完成品企業は差別化のポイントとして性能と機能のグレードアップを消費者に訴求し,消費者はその中からいくつかを受容した。そして,消費者が認めた性能や機能がその時代の競争の焦点となり,完成品企業各社はその焦点を目指して製品を開発し,投入した。こうした過程である時期における競争の焦点となり,企業間競争を通じて達成された性能や機能は消費者にとって「当たり前」のものになる。その結果,価格競争一辺倒になることを避けるために,ある企業が差別化ポイントとなるこれまでと異なる性能や機能をグレードアップしたり,消費者に意識されていなかった性能の評価軸や新たな機能を導入したりして,消費者に訴えかける。このようにしてDSC 産業では,競争の焦点が次々と移っ7 中国企業の特徴は組み合わせ能力を巧く活用し,モジュラー型製品において競争力を発揮すると想定することが多かった。8 延岡・上野[2005]42ページを参照。なお,同[2005]はDSCの平均単価がDVDプレーヤーに比べて高いこと,ノートPC やDSC はライフサイクルのはじめにあることの 2 点に留意している(同[2005]41ページを参照)。9 同[2005]42ページを参照。10 競争次元の高度化を着想するに当たって,土屋・劉[2003] ,青島[2003][2004]の影響を強く受けている。