094号

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76 高知論叢 第94号ていく。しかしながら,ここで注意が必要なのは,時間が過ぎ,次の競争の焦点が生まれたことによって, 競争の焦点ではなくなった性能や機能であっても,完成品企業にとって達成しなくて良いもの....

76 高知論叢 第94号ていく。しかしながら,ここで注意が必要なのは,時間が過ぎ,次の競争の焦点が生まれたことによって, 競争の焦点ではなくなった性能や機能であっても,完成品企業にとって達成しなくて良いものではなく,消費者は「当たり前」のものとして,永続的に要求し続ける。つまり,完成品企業にとってみれば達成すべき性能が高まり,機能が増加するので,競争次元は底上げされ,高度化してきたのであった。さらに,これは性能や機能に限ったことではない。デザインや商品コンセプトといった数値に表しにくいものも差別化のポイントとして,消費者に訴求され,受容されたものは競争の焦点となり,競争を通じて具体化された内容は競争次元として堆積してきたのである。 ところで,以上のような競争次元の高度化は,永遠に起こり続けるのだろうか。競争次元の高度化が起こるためには,新しい競争の焦点が誕生し続けなければならない。想定しているいくつかの性能と機能をグレードアップしている間は新しい焦点が次々と生まれるだろう。しかし,想定していた性能と機能をグレードアップし終えたとき,新しい性能の評価軸,新しい機能,新しいデザイン,新しい商品コンセプトがなければ,競争の焦点は生まれない。そう考えたとき,恐らく,ほとんどの製品において,新しい性能(の評価軸),新しい機能,新しいデザイン,新しい商品コンセプトが永遠に誕生し続けることはないだろう。これはDSCも同様である。 さて,部品技術が変動したり,技術変化が生じたりするのは,想定している性能や機能のグレードアップを目指した製品開発活動の結果だけだろうか。決してそれだけではないだろう。新しい性能,新しい機能を追求してきた結果もある。さらに,新しいデザインの探求が行われた結果でもあろう。新しいデザインは製品構造の抜本的な変更を要求し,部品技術の変動を激しくし,高い頻度で技術変化を促すだろう。同様に,新しい商品コンセプトの導入は,これまでDSC の前提になかった新しい性能をクリアしなくてはいけなかったり, 新しい機能を追加したりする必要が生じる結果,部品技術の変動性を高め,技術変化を促すと考えられる。つまり,1995年にカシオ計算機の「QV-10」のヒットによって,民生用市場が幕を開けたが,その当時,参入企業および参入を考えていた企業が想定した性能,機能は新しい差別化ポイントとして,各社によっ