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82 高知論叢 第94号う問題に直面する(図 2 )32。この問題を解消するために,富士フイルムは新方式のアナログ・フロンド・エンドIC を採用することによって信号量の減少を補い,撮影感度を保った。アナログ・フロ....

82 高知論叢 第94号う問題に直面する(図 2 )32。この問題を解消するために,富士フイルムは新方式のアナログ・フロンド・エンドIC を採用することによって信号量の減少を補い,撮影感度を保った。アナログ・フロント・エンドIC とは,図 3 におけるCDS(Correlate Double Sampling:相関二重サンプリング),AGC(AutomaticGain Control),ADC(Analog to Digital Converter:アナログデジタル変換機)を指し,これらはノイズの低減を行うとともに,電気信号の出力レベルを一定になるように信号の高低部分を補正し,アナログ信号をデジタル信号に変換する役割を担っており,各社のアルゴリズムの設定によって出力される絵の綺麗さが変わってくる33。綺麗な絵を追求するためには,「絵作り」と呼ばれる絵の作り込みが必要であり,図 3 に示したような一連の画像処理プロセスのなかで作り込んでいく。この画像処理プロセスは相互依存関係にある要素が多く,ある目的のため(例えば,発色を良くする)に設定を変更すれば,そのことによって綺麗な絵から離れるような問題(例えば,ノイズが多くなる)が生じ,それをクリアするために別の設定を調整しなくてはいけない。こういった作業は,要素間コーディネーションそのものであり,電子スチルカメラやビデオカメラで積み重ねてきた技術蓄積が助けになるわけである34。しかし,要素間のコーディネーションの前に「どんな絵が綺麗のか」,「試作機が写し出している絵は目指すべき絵とどう違うのか」が分からなければ,要素間のコーディネーションはできない。したがって,「絵作り」には目標設定,評価,調整という3つの活動が必要であり,どのひとつが欠けても「綺麗な絵」を達成することができない。つまり,綺麗な絵を生み出すためには「絵作りの能力」とでもいうべき組織能力が必要なのである(表 3 )。 では,絵作りの能力はどのように獲得することができるのだろうか。さきほ32 図 2 では単純化のために,画素数を一定のままCCD サイズを1/4にした結果,画素サイズも1/4になった例を表している。撮影感度の向上に関しては,詳しくは,拙稿[2005]81-82ページを参照されたい。33 詳しくは,拙稿[2006b]31ページを参照されたい。34 要素間コーディネーションとは,光学系,撮像系,画像処理系,ソフトウェアの間で行われるコーディネーションである。このコーディネーションの巧拙によって,最終的に得られる「絵」が大きく異なってくる。詳しくは,拙稿[2006b]29ページを参照されたい。