094号

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84 高知論叢 第94号ど述べたように, 第 3 要素に当たる要素間コーディネーションは電子スチルカメラとビデオカメラの研究開発や設計を通して技術蓄積がなされてきた35。したがって, 電子スチルカメラとビデオカメ....

84 高知論叢 第94号ど述べたように, 第 3 要素に当たる要素間コーディネーションは電子スチルカメラとビデオカメラの研究開発や設計を通して技術蓄積がなされてきた35。したがって, 電子スチルカメラとビデオカメラに携わった日本の多くの電機メーカー,フィルムメーカー,カメラメーカーは程度の差はあるものの,それなりの蓄積があったと考えられる。第 1 要素と第 2 要素は, カメラメーカーやフィルムメーカーが技術蓄積してきた内容である36。例えば,オリンパスは「C-1400L」の製品開発過程でCCD の歩留まりを上げるために品質基準を緩やかにする方向で見直した37。その際,CCD メーカーに対し,オリンパスは「人間の視角特性に対する深い理解を基礎としたシミュレーションを行い適切な許容度を決定」(第 1 要素に相当)し,CCD メーカーにその基準でCCD を製造してもらった結果,大幅に原価を低減したのである38。 以上のような,絵作りの能力は,画素数競争に引き込んだ製品(C-1400L やFinePix700)でのみ発揮されたわけではない。「FinePix700」以降,急速に画素数競争は進展したが, 単に画素数の高いCCD を搭載すればよいというものではなく,「綺麗な絵」の実現には要素間コーディネーションが必要であり,高画素化によってますます難しくなった。しかも,画素数が消費者の製品選択の重要な指標となっているため,他社に負けず劣らず,早く高画素の製品を市場に投入しなければならず,できるだけ短い期間で難しくなる「絵作り」も含めた製品開発をしなくてはいけなかった。こういった状況に適合する組織能力が「絵作りの能力」であったわけである。そして,この組織能力は先行する銀塩カメラ,電子スチルカメラ,ビデオカメラを通して蓄積できる能力であり,外国企業よりは多くの日本企業のほうが蓄積が進んでいた能力であった。したがって,画35 青島・福島[1997]370ページ,福島[2002]132ページ,土屋・劉[2003]209-210ページ,青島[2004]24ページ,廣田[2005]7ページ,島谷[2007]61ページを参照。36 以下,オリンパスのケース以外に,消費者が好む絵に関する知識について,土屋・劉[2003]210ページ,山口[2004]265ページ,長沢[2004]67ページ,島谷[2007]61ページなどがフィルムメーカー,カメラメーカーの技術的優位性を指摘している。37 青島[2004]37ページを参照。38 青島[2004]37ページを引用。「人間の視角特性に関する深い理解」には,最終消費者が静止画をどのように判断するかに関する感覚や知識が必要である(同[2003]120ページを参照)。同時に「ソフトウエアによる補完処理能力」(第 3 要素に相当)も発揮したとされる(同[2004]37ページを引用)。