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競争次元の高度化と日本デジタルスチルカメラ産業の国際競争力(1) 85素数競争が主たる競争の焦点として競争が展開されている期間,外国企業がプレゼンスを示すことはなく,世界市場において日本企業が国際競争力....

競争次元の高度化と日本デジタルスチルカメラ産業の国際競争力(1) 85素数競争が主たる競争の焦点として競争が展開されている期間,外国企業がプレゼンスを示すことはなく,世界市場において日本企業が国際競争力を発揮していた39。(3)多種多様な差別化競争 1997年にはじまった画素数競争は今日においてもなお続いている。しかし,現在の競争はもっと複雑である。いくつもの性能,目新しい機能,そしてデザインや製品コンセプトを競っている。こうした状況を多種多様な差別化競争とすると,その始まりを2000年あたりに求めることができる40。差別化ポイントの一例を挙げていくと,液晶モニタの大きさや綺麗さ,撮影可能枚数の多さ,起動時間の速さ,レリーズタイムラグの短さ,撮影間隔の短さ,連続撮影の速さと枚数の多さ,デザイン,小ささ,軽さ,薄さ,シーンモード撮影の充実さ,手ブレ補正の有無,顔認証機能の有無,感度の高さ,広角レンズ,高倍率ズームといったものである。では,これらの差別化ポイントはどのように開発されたのであろうか。筆者は多くのものが絵作りの能力が巧く機能したと考えている(中道[2006a])。 デザインを差別化ポイントにする競争の例を考えてみよう。製品デザインが製品企画プロセスのなかで重視される傾向が出てきている41。デザイン性を追及するには,部品点数を少なくしたり,部品を小さくしたり,レイアウトを工夫したりすることによって実現できる。逆に言えば, 部品点数を少なくしたり,部品を小さくしたり,レイアウトを工夫したりすることができなければ,少なくともDSC においてはデザイン性を追及できない。この好例として, デザイン性が評価されたソニーの「T1」がある。軽薄短小を目指すために,①折り曲げレンズの開発によってレンズの厚みを薄くし, ②新しいパッケージ方39 電機メーカーは,DSCの設計開発を通じて,「絵作りの能力」の第 1 要素,第 2 要素を獲得するとともに,長年の光学技術を持つメーカーと提携することでも,その能力を早期に身に付けようとした。この例として,パナソニックとライカ,ソニーとカール・ツァイスの提携を挙げることができる。40 青島[2003]120ページ,同[2004]15-16ページ,土屋・劉[2003]222ページを参照。41 中西[2007a][2007b][2008]および日本写真学会「第16回カメラ技術セミナー」(2008年11月28日,発明会館)における堀切和久氏(富士フイルム)の講演内容を参照。