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競争次元の高度化と日本デジタルスチルカメラ産業の国際競争力(1) 87るのかを理解することができたのだろうし,その理解をうまくデザインの追及に活かしたと考えられる。 このように,「絵作りの能力」を活用す....

競争次元の高度化と日本デジタルスチルカメラ産業の国際競争力(1) 87るのかを理解することができたのだろうし,その理解をうまくデザインの追及に活かしたと考えられる。 このように,「絵作りの能力」を活用することによって,綺麗な絵とは離れた差別化ポイントである多くのものについても日本企業は製品に盛り込むことができたのである44。つまり,「絵作りの能力」が日本企業に偏在し,その上,それを活用できる多種多様な差別化競争が起こっている限りは,外国企業がプレゼンスを示すことは難しく,世界市場において日本企業が国際競争力を発揮することになるのである。(4)事業システムの組み替え 差別化のポイントを生み続けるのは難しい。銀塩カメラに追いつけ追い越せという時期であれば,企業は次々に差別化のポイントを見つけ,市場に問うことができただろう。しかし, 銀塩カメラが実現していたことの多くをDSC が実現してしまった現在,新しい差別化ポイントを見つけ,それを達成するためにこれまで以上に研究開発に注力しなければならなくなっている。一方で,低価格化が進展している地域(欧州, 北米州)が出てきたり,D-SLR といった新市場も出てきたりしている。こうした状況は開発部門に対してより大きな負担になる。新しい差別化ポイントの達成に向けた研究開発を行いながら,低価格化への対応をし, さらにはC-DSC よりも複雑で難易度の高いD-SLR にも攻勢をかけなければならないからである。 日本企業,とりわけ内部資源が限られた中堅企業は2000年ころから積極的に事業システムの組み替えを行うことによってこの状況に適応してきた。事業システムの組み替えとは,「競争環境,内部資源,外部資源,将来の事業ビジョンを総合して,一部の製品ラインナップの事業システムを変更する」ことである45。組み替えの例として,①企画から設計開発,製造,販売(ブランド)まで44 デザインの追求に関しては,前述の富士フイルム「FinePix700」の例もある。また,レリーズタイムラグの短縮では,山口[2004]の記述を参考にした拙稿[2006a]152ページもある。45 加護野・井上[2004]では,事業システムを「経営資源の一定のしくみでシステム化したものであり,①どの活動を自社で担当するか,②社外の様々な取引相手との間にどのような関係を気付くか,を選択肢,分業の構造,インセンティブのシステム,情報,