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介護労働の変容と財政課題99術の向上のための研修時間についても同様である。いずれもヘルパー間で情報や課題を共有し,また,質の高い介護を安心して行うためには不可欠な活動であるが,補助の対象とならないのであ....

介護労働の変容と財政課題99術の向上のための研修時間についても同様である。いずれもヘルパー間で情報や課題を共有し,また,質の高い介護を安心して行うためには不可欠な活動であるが,補助の対象とならないのであれば「やるだけムダ」「やればやるほど赤字」となりかねない。 1997年度については,訪問介護の事業主体は人件費補助方式か事業費補助方式のいずれかを選択できることとし,1998年度から事業費補助方式に全面移行することとされた。その選択に際し,ホームヘルパーを派遣している各地の市町村社会福祉協議会がそれまでの活動実績をふまえた試算を行った結果, その 9 割が事業費補助方式に移行した場合に大幅な赤字となることがわかった30。また,ある市においては事業費補助方式における補助額が人件費補助方式(「活動費」を含む)ではその72.3%にまで減少するという結果になった31。 事業費補助方式への移行にともない,介護現場においては,手間と時間のかかる入浴介護などを行う「滞在型」から,手短に手っ取り早く介護でき,単価も高い「巡回型」が重視されるようになった。不安定・不規則な労働形態にある非常勤ヘルパーを多く使い,細切れの「駆け足介護」「切捨て介護」で回数(補助金)を稼ぐことが奨励されることになり,介護保険実現に向けた「サービスの効率化」が具体化したといえる。【参考文献】石田一紀・植田章他〔2000〕『介護保険とホームヘルパー ―ホームヘルプ労働の原点を見つめ直す―』萌文社上野千鶴子・大熊由紀子・大沢真理・神野直彦・副田義也〔2008a〕『ケアすること(ケアその思想と実践 2 )』岩波書店上野千鶴子・大熊由紀子・大沢真理・神野直彦・副田義也〔2008b〕『ケアを支えるしくみ(ケアその思想と実践 5 )』岩波書店大井川裕代〔2009〕『医療と介護の連携・調整(実践・高齢者介護第 3 巻)』ぎょうせい小笠原祐次〔1978〕「老人福祉従事者の現状と問題点」『ジュリスト増刊総合特集№12高齢化社会と老人問題』金子勝・結城康博〔2009〕『検証!改正後の介護保険(実践・高齢者介護第 1 巻)』ぎょ30 石田一紀,前掲論文,p. 10。31 明星智美〔1998〕「ホームヘルプ整備の遅れと補助金制度の問題点」日本福祉大学社会福祉学会『真の公的介護保障めざして』あけび書房,p. 189。