095号

095号 page 104/114

電子ブックを開く

このページは 095号 の電子ブックに掲載されている104ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
102 高知論叢 第95号は有意水準に達せず,耕地反当地価と農産物推定商品化率と農業有業人口 1 人当農産物推定販売額との相関係数は有意水準に達していることを明らかにした。 西日本の地主制について,反当農業生....

102 高知論叢 第95号は有意水準に達せず,耕地反当地価と農産物推定商品化率と農業有業人口 1 人当農産物推定販売額との相関係数は有意水準に達していることを明らかにした。 西日本の地主制について,反当農業生産力の発展と関係が深く,それは農業生産力の発展と貢租の実質的低下→農民的剰余の発生→商品生産の展開→農民層の分解→地主・小作関係の発生とその進展,といった一連のプロセスをたどって形成されたと述べている。 これらは日本の地主制形成過程の地域的特質の把握に関して一石を投じたものであり,金谷氏の貢献は大きいものがある。第2部 実質賃金の推移と景気変動 金谷氏は,実質賃金の推移と景気変動が如何なる関係があるのか,また地域的な格差はあるのか否かを明らかにした。 一般の常識では,景気がよくなると貨幣賃金が上がり,消費者物価も同様に上昇する。もし消費者物価は景気の変動と同じ数値で変動したら,実質賃金は変わらないことは当然である。金谷氏は地域の格差,消費者物価の変動の格差などの数多い外部条件をふまえてそれらを解明した。 金谷氏は近代日本経済史のなかで,従来実証的に明らかにされなかった,実質賃金の推移と景気変動に関して,都市と農村を比較研究することによって,実質賃金の地域間格差を実証的に明らかにした。即ち景気変動と実質賃金の推移を時間的空間的な広がりの中で比較検討した事が本書の大きな功績である。 本書で分析の対象とした地域は大阪市および高知県である。金谷氏は大阪と高知の実質賃金の推移と, 近代日本が受けた大きな二つの景気変動, 即ち第 1 次世界大戦による好況と不況,および昭和恐慌との関係について明らかにし,さらに大阪市と高知県との賃金格差についても実証的に解明された。 金谷氏は大阪の実質賃金の推移について以下のことを明らかにされた。賃金の上昇は1918年(大正 7 )から1922年(大正11)までかなりのテンポで上昇し,1905年から06年において突出している。これは日露戦争の影響であると思われる。1918年から1922年までの大正後期においては,実質賃金がかなり急速に上