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20 高知論叢 第95号たがって金融は,「情報利権と情報格差がまん延する公共財」である。 以上述べたこの二つの性質が現実に存在することについては,リーマンブラザーズ破たんに始まる今回の世界金融危機が,わた....

20 高知論叢 第95号たがって金融は,「情報利権と情報格差がまん延する公共財」である。 以上述べたこの二つの性質が現実に存在することについては,リーマンブラザーズ破たんに始まる今回の世界金融危機が,わたし達の目の前でまるでドラマを見ているかのように実証的に示して,わたし達を驚かせた。 第 3 に,金融は,リスクを内包した危ない公共財である。 金融という共同利用財には, その本質的要素としてリスク(損失の可能性)が内包化(内在化)しているからである。 通常の一般有形商品は,リスク(経済的損失や身体的損傷などの可能性)がないことを前提として販売されている。事故が多発するようになったとしても,リスクの無いことが当然のこととして取引されている。しかし,これらの一般の商品と異なり,金融商品や金融サービスは,リスクが含まれていることを前提として取引が行われるという特徴をもつ。とりわけ資産運用や資金調達などにかかわる金融商品についてはそうであり,そのことで思わぬ損失を招く場合が多い。 さらにこのような個々の利用者がそれぞれの取引で被る個別的損失だけでなく,これらのリスクが金融仲介機関に集中し,社会的・国際的な規模でのリスク連関が拡大しては破綻し,繰り返し金融恐慌を引き起こしては,社会や国際社会に莫大な損失をもたらしてきたのである。 第 4 に,金融は,リスク管理を必要とする公共財である。 したがってこれらのリスクを適切に管理しなければ,金融における持続的利益はもたらされないことになる。金融の共同利用によって発生するとされる金融の共同利益は,適切な金融リスク管理によって保証される。規制,監査,監督・監視,法令制定などの多様な方法や手段でのリスク管理費用の負担が必要になるのである。 金融リスク管理の種類と方法を分類すれば,(イ)個別的リスク管理,(ロ)社会的リスク管理,(ハ)国際的リスク管理の三つに大別できる。これらは,金融リスクの発生範囲とリスク管理の責任範囲で分類したものである。(イ)→(ロ)→(ハ)と進むごとに,金融リスクの発生範囲とリスク管理責任範囲は拡大する(図 1 参照)。15) 個別的リスク管理とは,個人,企業,団体,金融仲介機関などの金融システ