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金融ユニバーサルデザイン(上) 29ユニバーサルデザインの情報デザイン原則で取り扱われる「情報」に,リスク情報と社会的責任情報・国際的責任情報をふくめることによって,解決可能である。金融ユニバーサルデザ....

金融ユニバーサルデザイン(上) 29ユニバーサルデザインの情報デザイン原則で取り扱われる「情報」に,リスク情報と社会的責任情報・国際的責任情報をふくめることによって,解決可能である。金融ユニバーサルデザインがソフトウェアーユニバーサルデザインであることが,このことを可能にした。これを盛り込んだ金融ユニバーサルデザインの原則については,次章で提案したい。 金融ユニバーサルデザインを導入すれば,わたしの金融の公共性の定義は次のようになる。「どのような状況にあるどのような人であってもすべての人が,金融と国際金融を利用あるいは利用接近でき,その利用から持続的な利益と満足を得られ,同時に社会や国際社会の持続的発展を実現できるように,金融と国際金融における利用対象物と利用方法を制御すること。」注)1 ) ユニバーサルデザインとわたしの出会いは,衝撃的なものだった。今でもその状況が鮮明によみがえるが,2005年 2 月10日,妻の裕子がふとユニバーサルデザインについて特集した婦人雑誌を見せてくれた。寝ころんで何気なくページを繰っていたわたしは,突然,弾かれたように飛び起きた。公共性についてより具体的で目に見える原則,わたしが求めてやまなかった原則が掲載されていたのである。公共性についての学界の抽象的で実生活からかけ離れた議論に嫌気を覚え, なんとかそこから脱却しようともがいていたわたしにとっては頂門の一針であった。それから 2 週間,なにかに取り付かれたように興奮して,妻に金融ユニバーサルデザインのアイディアを早口で次から次へとしゃべり続けた。妻は一言も漏らさまいと懸命にその内容を速記してくれた。これらのメモが今回の研究の出発点になった。 このような機会を提供してくれたことについては,妻とともにもう一人,高知大学人文学部社会経済学科の学生であった吉岡邦廣くんに感謝しなければならない。吉岡君は,本学に入学してすぐに失明したが,懸命なトレーニングのすえ本学に復帰し,全盲という障がいを克服し,優秀な成績で本学を卒業した。彼の在学中,わたしは彼の就学をサポートする支援委員会委員長として,ボランティアで参加してくれた有志の教員メンバーと協力して,条件整備などの支援にかかわってきたのである。ひた向きで誠実な彼との交流からは,今回の論文につながる多くのことを学んだ。妻が上記の婦人雑誌を見せてくれる幸運に巡り合えたのも,この交流が縁である。2 ) ユニバーサルデザインの経緯・背景については,ロンメイス氏およびその関係者に直接の聞き取り調査をした川内氏の次の文献に依拠している。川内美彦[2001]『ユニバーサル・デザイン:バリアーフリーへの問いかけ』,同[2007]『ユニバーサル・