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30 高知論叢 第95号デザインの仕組みをつくる―スパイラルアップを実現するために』。3 ) この原文は,「The design of products and environments to be usable by allpeople, to the greatest extent possible,w....

30 高知論叢 第95号デザインの仕組みをつくる―スパイラルアップを実現するために』。3 ) この原文は,「The design of products and environments to be usable by allpeople, to the greatest extent possible,without the need for adaptation or specializeddesign.」である。川内氏によれば,「最大限可能な限り(to the greatest extentpossible)」という文言が,「すべての人」を修飾するのか,それとも「製品・環境」にかかるのかという点について,ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターの出版物では,また日本語訳でも,二つの異なる理解があるという。そして川内氏は,「理念的な最終ゴールとしては対象の人を限定するものであってはならないはずです。従って,本来的な対象は『すべての人』であり,“ to the greatestextent possible”は製品・環境にのみ係ると考えるほうが妥当だと,わたしは考えます。」と主張してその視点に基づく定義を示している。川内美彦[2007]『ユニバーサル・デザインの仕組みをつくる―スパイラルアップを実現するために』pp. 8~11。 しかし私見では,どう考えてもこれは「すべての人」と「その利用」を修飾しているとしか考えられない。わたしは,理念的最終ゴールであっても,改造や特別デザインを必要とする場合があることを,この挿入文が示したのではないかという結論に至った。この点については妻裕子との意見交流の成果に依る。4 ) 経済学において,人間の潜在的能力の開発と実践の功績に対して,1998年にアマルティア・セン氏にノーベル経済学賞が贈られた。しかしそれよりもずっと以前から池上惇氏(京都大学名誉教授)は,学習人モデルと人間発達モデルでそのような方法論を理論的に開拓し,経済学の新しい境地を先駆的に切り開いてきていたのである。これらの研究方法は,人間の理性的行為の側面に注目し,人間が賢くたくましく成長していくことに展望を見いだそうとするものである。 しかしわたしは,このような行為側面の意義を高く評価しながらも,それよりもっと広く現実の人間を多面的にとらえようとする点で異なっている。池上氏は, 発達保障という条件整備の重要性を強調するが「人間の享受能力の発達」と主張して,どちらかといえば人間の方に重点を置くのに対して,わたしの立場は,どのような状況にあるどのような人でも享受できるようにしようと,いわば「享受手段や享受環境」の方をより重視するのである。5 ) 「人間主義的方法論」という視点は,次の拙稿で明らかにしたものである。紀国正典[2006]「国際金融システム論( 2 )―金融におけるシステム論的方法の展開―」。6 ) 公共性についてのわたしの研究にもとづいた意見である。わたしの公共性研究は,紀国正典[1999]「公共性と公共性諸学説―国際金融システムの規範的方法の検討(1)―」に始まり,紀国正典[2009]「金融の公共性と社会的責任金融・国際的責任金融」まで続いた。7 ) 日本経済新聞「政府, バリアフリーで新要綱: 施設や商品へ普及目指す」2008年 3 月28日付け。8 ) ノースカロナイナ州立大学ユニバーサルデザインセンター(The Center forUniversal Design)ホームページ:http://www.design.ncsu.edu/cud。