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42 高知論叢 第95号働の販売を前提にして労賃形態を論じたというマルクス批判が頻出する。労賃形態成立の問題は,つきつめていえば,労働力本体ではなく,労働力の使用価値が価値をもつかにみえる客観的な根拠はな....

42 高知論叢 第95号働の販売を前提にして労賃形態を論じたというマルクス批判が頻出する。労賃形態成立の問題は,つきつめていえば,労働力本体ではなく,労働力の使用価値が価値をもつかにみえる客観的な根拠はなにかにある。マルクスによれば,商品の基本形態としての労働生産物のばあい,生産物である使用価値が価値をもつ商品体になる関係から,労働力のばあいも,生きた労働という使用価値が価値をもつ商品体としてあらわれる因果が労賃形態成立の本源的な根拠としてとかれる。おおくの先行研究では,『資本論』のとく第一の根拠が未解決のため,マルクスのといた労賃形態成立の肝心かなめの本丸にせまりえていないようにおもわれる。  それゆえ,本稿の課題は,第17章での第一の根拠に照準をあて,労働の価格は,物質的財貨のばあいに,使用価値が価値のにないてになる仕方と同一基本線上に展開されるゆえんを考察する2)。1) 「現象では事物が転倒されて現われることがよくあるということは,経済学以外では,どの科学でもかなりよく知られていることである。」(Ibid., S. 559) 貨幣商品金のばあいも,現象形態では,事物の本質がさかだちしてあらわれる典型例のひとつである。金が商品の絶対的な価値形態であるのは,ほかのあらゆる商品が価値を金であらわし,一般的等価物の役目をあてがう社会関係に起因する。ところが,外観のうえで,金は,空気中での非酸化性や王水以外にとけない耐酸性,金箔にできるほどの展延性などすぐれた自然的な属性のため,あらゆる商品にたいする直接的な交換可能性をもつかにあらわれる。貨幣の直接的な交換可能性が社会関係からでなく,金の自然的な性質にゆらいとみえるのも,事物の本質の現象形態における転倒性をあらわす。2) 以前に,拙稿「貨幣関係と労働の価格」(『一橋論叢』第108巻第 6 号,1992年)で,労賃形態成立のしくみについて試論を提出した。その後,第一の根拠にこめたマルクスの真意を正確にさぐりあてていない不十分さに気がついた。本稿は,前稿のもつ基本欠陥をあらため,労賃形態の成立根拠をリセットしたものである。1 物質的財貨の商品への転化 労働の価格とは,労働そのものが商品として販売対象をなし,価値をもつとみえることであるから,労賃形態成立をとうさいの問題の焦点は,どうして労