095号

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48 高知論叢 第95号ままで商品体としてあらわれることになるというのである。こうして,まさに,第一の根拠は,本質としての労働力の価値が,いかにして労働の価格という現象形態をとるかその本源的な根拠をといた....

48 高知論叢 第95号ままで商品体としてあらわれることになるというのである。こうして,まさに,第一の根拠は,本質としての労働力の価値が,いかにして労働の価格という現象形態をとるかその本源的な根拠をといた決定的な箇所と理解される。第二の根拠から第四の根拠までは,第一の根拠でとかれた労賃形態が前提され,それをさらに一層つよめる補強要因だとかんがえられる。けだし,第二の根拠のところで,「『労働の価値』とか『労働の価格』とかいう表現も,『綿花の価値』とか『綿花の価格』とかいう表現以上に不合理なものには見えない」(Kapital,Ⅰ, S.563)とのべられ,第三の根拠では,「いま論じている場合には,提供された労働の価値または価格をあとから実現する」(Ibid., S. 563)として,「労働の価値」または「労働の価格」が所与の前提におかれているからである。第四の根拠においても,事情はおなじである。「労働の価値」または「労働の価格」は,生きた労働そのものが同時に抽象的人間労働でもある関係に帰着する。そこで,労賃形態が念頭におかれ, 物質的生産物の商品のみを分析対象にすえた第 1 章第 2 節の観点から,つぎのようにふりかえられる。すなわち,生きた労働は,それ自身具体的有用労働をなし,物質的財貨に対象化された形態におかれてはじめて,市場の交換のなかで,具体的属性が客観的な捨象をうけ抽象的人間労働に還元される,これにはんして,普通の意識では,物質的財貨に対象化された具体的有用労働との単純な類推によって,流動状態にある具体的有用労働もまた同時に抽象的人間労働としての一面をもつと水平思考され,労働の二重性のなりたつ社会的な条件にまでは思いがいたらないむね,労働の価格を補強する要因の分析がふかめられる。第二の根拠から労働の価格が登場するのは,第一の根拠で,それが労働力の価値から本源的にとかれたためである。 以上,本節で,物質的財貨の販売の基本線上に,生きた労働という使用価値が商品体としてあらわれ,労働の価格が合法則的になりたつ仕方をといた(労働生産物が価値をもつ[物質的財貨のばあい]→使用価値が価値をもつ→生きた労働が価値をもつ[労働の価格の成立])。マルクスが労働の販売という事実を前提にしたという批判は,第一の根拠の未消化の産物にすぎない。背中の子を 3 年さがすということわざが思いおこされる。マルクスが労働の販売を説明していないという見方は,労賃形態の必然性の理解ほど容易なことはないとい