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50 高知論叢 第95号3 労働力商品の検証 前節で,労働力商品にあっては,物質的財貨の販売の仕方にならい,労働という使用価値が商品体として価格形態をとってあらわれる合法則的なしくみをといた。ところが,労賃....

50 高知論叢 第95号3 労働力商品の検証 前節で,労働力商品にあっては,物質的財貨の販売の仕方にならい,労働という使用価値が商品体として価格形態をとってあらわれる合法則的なしくみをといた。ところが,労賃形態成立にかんするマルクスの説明は,同時に,商品としての販売対象が労働ではなく,労働力であるという本質の回帰的な検証になっている。そこで,本節で,マルクスのとく労賃形態の成立根拠は,労働力商品定立の正当性の確認でもあることをふりかえる。 『資本論』にあっては,抽象的なカテゴリーの正当性は,それを展開して具体的なカテゴリーを内在的に説明しえたとき,検証される。たとえば,価値の概念にあって,価値形態をその本質のとる必然的な現象形態として説明しえた時点で,実体である抽象的人間労働の歴史的な性格の正当性があらためて確認される1)。抽象的人間労働は,物質的生産物の交換のなかでのみ,具体的有用労働のもつ異質性の客観的な捨象によってなりたつため,それを実体とする価値は,労働分量によっては表現されず 2),交換される相手方の商品の使用価値というすがたでのみあらわれる。価値は,本質的に抽象的人間労働という歴史的な実体をもつため,二商品の交換割合からなる価値形態という特有な表現様式をとることになる。それとおなじように,労働力商品のばあいも,労働力の価値という本質が労働の価格としてあらわれる社会的な関係をとくことによって,労働ではなく労働力が販売対象だという命題の正当性が,同時にたしかめられる。分析における一歩前進には,前段階の土台がためというもう一つの含意がある。 すなわち,労働力商品の販売は,かならず一定期間をかぎっておこなわれる。だから,労働力商品は,時間ぎめでのその販売と不可分である。つまり,労働力の販売とは,厳密にいえば,その時間ぎめでの販売に帰着する。労働力の販売というのも,労働力の時間ぎめでの販売というのも,一点のちがいもない同一の事柄である。労働力のひとまとめでの販売は,労働者の奴隷への転化をいみする。ところが,労働力商品に必須である時間ぎめでのその販売こそ,労働