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生産物の商品化と労働の商品化51の価格成立の基礎である。というのも,労働力の使用価値は,時間ぎめでの販売という本質的な性格によって,生きた労働としてあらわれることになるからである。労働力の使用価値が生き....

生産物の商品化と労働の商品化51の価格成立の基礎である。というのも,労働力の使用価値は,時間ぎめでの販売という本質的な性格によって,生きた労働としてあらわれることになるからである。労働力の使用価値が生きた労働という形態をとるのは, 一定時間を限っておこなわれる労働力の販売方法に起因する。労働力の使用価値が生きた労働としてあらわれれば,物質的生産物という商品の基本形態において,使用価値が商品体をなし価値をもつ関係から,生きた労働が商品体として眼前にあらわれることになる。したがって,物質的財貨の販売において,使用価値それ自体が商品として価値をもつ関係を根本前提としてふまえれば,労働力の販売は,時間ぎめでの販売という形態をとることによって,労働の価格をもってあらわれる。時間ぎめでの販売をバネに,労働力の使用価値が生きた労働としてあらわれるのだから,労賃形態は,特有な販売方法をもつ労働力商品に基礎をもつ事実をうらづける。だから,労働力の価値の労賃への転化の説明は,じつは販売対象の商品が労働力であることを確証しているのである。 ひるがえって,先行研究をみれば,労賃形態成立の説明にさいして,生産過程での労働力の消費を不可欠の契機としてからませる議論が支配的な現状にある。しかし,ここには,第17章での労賃形態成立の本源的な理由である第一の根拠が不分明だという深刻な事態があるが,それを別にすれば,労働の価格成立の必然性を説明することは,とりもなおさず労働力商品の正当性の確認だという問題意識のうすさがあるとおもわれる。けだし,生産過程での労働力の消費は,それ自身,その使用価値の実証にかかわるにすぎないからである。換言すれば,商品としての労働力そのものは,使用価値と価値という二要因をもつ販売対象としては,市場での資本家と労働者とのあいだでなりたつ。だから,労賃形態の成立の説明にあたって,商品としての販売対象が本質的に労働力であるという要点は,その使用価値の実証にはかかわらない。『資本論』第Ⅰ巻第 1 章「商品」がしめすように,生産物の商品への転化は,私的所有の対象である生産物が相対する市場でのみなりたつ。したがって,労賃形態成立の説明によって,労働力商品定立の正当性を検証しようと意図するかぎりでは,問題の対象は,市場での労働力にあって,生産過程でのその消費にはかかわりがない。ようするに,労賃形態成立を本源的にとく第一根拠の掘りさげの不十分さは,同時に,ここ