095号

095号 page 54/114

電子ブックを開く

このページは 095号 の電子ブックに掲載されている54ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
52 高知論叢 第95号で労働力商品定立の正当性の検証がとわれているという問題認識の希薄さとリンクしているのである。生産過程での労働力の消費をからませる先行研究にあって,第17章でとかれる第一の根拠の未消化....

52 高知論叢 第95号で労働力商品定立の正当性の検証がとわれているという問題認識の希薄さとリンクしているのである。生産過程での労働力の消費をからませる先行研究にあって,第17章でとかれる第一の根拠の未消化は,労賃形態の必然性のブレーキをなすだけでなく,労働力商品の正当性の検証という問題認識をうすめたつまずきの石でもある。 以上,本節で,労働の価格成立の根拠づけは,それ自身販売対象が労働力そのものであるという本質論のただしさの検証にもなっている含意をうきぼりにした。やや性格にちがいはあるが,たとえば,剰余価値をうむ価値という資本の抽象的な概念規定 3)の検証方法もおなじである。マルクスの資本概念にたてば,剰余価値をうむ主体は,商品またはその転化形態である貨幣に固有に内在する価値である。だから,マルクスにあっては,独立生産者からなるたんなる商品生産では,付加価値はうまれても剰余価値の創造はありえない。生きた労働の支出それ自身のために,価値は前貸しされないからである。剰余価値をうむ価値という資本の概念規定は, 剰余価値創造が労働力への価値の前貸しによってのみなりたつしくみの論証によって,その正当性が検証される。したがって,資本の抽象的な規定は,労働力への価値の前貸しによる剰余価値創造の証明にもとづいて再確認される関係にある。ここに,分析における前進は,そのはんめん抽象的な概念の検証をふくむため,後退でもあるというふかいいみがある 4)。1) 「諸商品の使用価値に対象化された労働時間は,これらの使用価値を交換価値とし,したがって商品とする実体である。」(Kritik,MEGA, Ⅱ /2,S. 110)ここに,生産物に対象化された具体的有用労働は,その商品への転化によって,抽象的人間労働へ還元される関係が明言されている。2) 「一商品の交換価値は,その商品自身の使用価値には現象しない。」(Ibid., S. 117)3) マルクスは,『資本論』第Ⅰ巻第 4 章第 1 節で, 資本に「自分を増殖する価値」(Kapital, Ⅰ,S. 169)つまり「剰余価値を生む価値」(Ibid., Ⅱ,S. 33)という概念規定をあたえている。4) 見田石介『資本論の方法』弘文堂,1963年,46-53ページ。