095号

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4 高知論叢 第95号とになるかもしれない。思わぬ病気から目や耳が不自由になったり,脳や内臓,足などに障がいを負い車椅子を余儀なくされる人も多い。さらに加齢は,確実に人間の知覚能力・認知能力・判断能力・運....

4 高知論叢 第95号とになるかもしれない。思わぬ病気から目や耳が不自由になったり,脳や内臓,足などに障がいを負い車椅子を余儀なくされる人も多い。さらに加齢は,確実に人間の知覚能力・認知能力・判断能力・運動能力を衰えさせる。まったくこれらのことがなく一生を終える人間などいない。誰でも程度の差はあれ,障がいと呼べるものはあり,それは個性と能力の差異といっていいものである。 これらのすべての人々が,それぞれの多面的多様性にかかわらず,快適に生活できるようにしようというのがユニバーサルデザインの考えである。どのような状況にあるどのような人であってもすべての人が,最大限可能なかぎり,利用対象物とその利用から利益と満足を得ることができるようにしようという思想である。 ユニバーサルデザインは,人間が道具や製品,建物,周辺環境に合わせるように,あるいやそれを使いこなせるように自分を無理に変革したり適応させたりするのではなく,道具や製品,建物,周辺環境などの利用対象物の方を,多面的な多様性のある人間に従わせようとする原則である。 その根底にある人間観や人間の見方は,これまでの経済学が見落としていたことである。経済学が見落としてきた人間観 これまでの伝統的な経済学は,人間を単純化して,自然法則や物理法則のように社会が動く法則を解明しようとしてきた。そこで描かれた人間は,いつも単純で一様な行動をするものとして取り扱おうとした。そのことで同じような運動や行動をする要素単位を設定して,「純粋の法則」というものを定めたかったからである。例えば,認知能力や行動能力も平均的で一様である人間や,個人的欲望や利害で一様に行動する人間などの設定である。しかしこれは現実に存在している人間を無視したものである。なかにはこの理論を現実に当てはめようとしたり,理論と現実の厳しい相互検証を忘れ,理論どおりに進まないと現実が間違っているという人もいる。 近年その反省からかミクロ経済学の分野で,ゲームの理論,情報の経済学,実験経済学,心理経済学,行動経済学などの研究領域が発展している。また経