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60 高知論叢 第95号することを目的とした研究が行われている。その代表例がペアレンティング理論である。 ペアレンティング理論に関する諸研究の嚆矢となったのは,Goold and Campbell(1987)24である。彼らの出....

60 高知論叢 第95号することを目的とした研究が行われている。その代表例がペアレンティング理論である。 ペアレンティング理論に関する諸研究の嚆矢となったのは,Goold and Campbell(1987)24である。彼らの出発点は,以下のような諸疑問である。 「本社について,その重要性が認識されているにもかかわらず,それがどのように運営されるべきかについての確立した諸理論あるいは有用な処方箋はほとんどない。本社の正しい役割についての明確な統一見解はない。さらに,本社が創造する価値についての諸疑念(doubts)が晴らされていない。どんな場合に本社の影響力は有益なものとなるのか?どんな場合にそれは単なる高価な間接経費となってしまうのか?ある一つの大きなグループに所属していることは,どんな諸メリットを,その内部の個々の事業部門に与えるのか?」25 こうした諸疑問が提示された背景には,当時の欧米の諸企業において,戦略面では複数事業経営(多角経営)が,そして組織面では事業部制組織等が,それぞれ従来の単一事業経営(専業経営)や機能別組織に代わって急速に台頭するという現象が起こっていたことがある。すなわち,なぜ複数事業企業では,各々の事業部門は当該企業から分離し独立した企業として経営を続けていける能力があるにもかかわらず,本社の管轄下にあり続けるのか?という疑問が出発点となっており,この疑問がさらに,本社の役割(または機能)26に関する議論につながったのである。 そして,彼らはこの疑問に対する解答を,本社が創造し,その管轄下の諸事業部門に対して提供する「価値」に求めた。一般に「価値」という言葉の意味は,それを用いる意図によって様々に異なるが,彼らの説明によれば,ある一つの複数事業企業の最大の目的や最優先事項(例:株主価値最大化)が,それが何であれ,諸事業部門が本社の管轄下にある場合に,そうでない場合よりもよりよく達成されるときに,「価値」が創造されるとのことである27。よって,彼らのいうところの「価値」(の大きさ)とは,それら二つの場合における達成度の差であると解釈できる。 ただし,この価値創造機能は本社だけが担っているわけではなく,その管轄下にある諸事業部門の各々が内包するゼネラル・マネジメント層(事業部門の