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金融ユニバーサルデザイン(上) 5済学の新しい展望と方向性を切り開いたものに,人間の潜在的能力の開発理論,学習人モデルと人間発達学説がある。4) しかし,それらで取り扱われている人間も,わたしの知る限り....

金融ユニバーサルデザイン(上) 5済学の新しい展望と方向性を切り開いたものに,人間の潜在的能力の開発理論,学習人モデルと人間発達学説がある。4) しかし,それらで取り扱われている人間も,わたしの知る限りで,健康で知覚能力も一人前で,自立した判断能力をもった人間である。現実に存在している人間の多面的多様性については,わたしほどには重要視していない。 わたしの立場は,多面的多様性をもって現存する人間をそのまま受け入れようとする方法である。健康な人間,学習や経験を深めている人間,他者を思いやる心の強い人間,高度な注意能力や専門能力をもつ人間などもいれば,他方で,愚かで弱い人間,いろいろ悩みや病気,障がい,困難を抱えている人間,欲望に弱い人間,注意能力の弱い人間などもいる。またいくら健康で知的能力が高いとしても,不測の事故などで思いもかけぬ失敗をしたり病気になったりすることもある。このような現実の人間総体を基本において社会を探求する方法を,わたしは「人間主義的方法論」と名づけた。ユニバーサルデザインの人間観は,このわたしの方法論と合致する。5)ユニバーサルデザインは公共性の発展指針 このようなユニバーサルデザインの思想と考え方は,公共性を発展させるためになくてはならないものである。 わたしの公共性研究の成果によれば,公共性あるいは公共財とは,そのような固有の性質をもった財を表そうとしたものではなく,人間の集合的な行為様式の多元的な側面を表現しようとした名称である。わたしはそれらの具体的な行為ケースをできる限り多く盛り込むことができるようにするため,共同利用,共同利益,共同制御という,三つの行為側面を一般的・抽象的に表した用語に集約することにして,それを公共性三元論とよんだ。公共性三元論とは,簡単にいえば,みんなのものを,みんなの利益になるように,みんなで制御しようとする集合的行為様式を表現したものである。6) この考えに基づけば,わたしの公共性の定義は,次のようになる。「不特定多数の人が,利用あるいは利用接近でき,その利用から持続的な利益と満足を得られ,同時に社会や国際社会の持続的発展と調和できるように,利