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78 高知論叢 第95号士候補者として,日本各地の介護施設で働き始めた。少子高齢化が進展する日本において,介護サービスのさらなる充実が求められるなか,外国からの介護労働(候補)者の受け入れは,日本の介護施策において大きな転換をもたらすであろう。 折りしも,前年からの経済不況と雇用危機が一層深刻化し,「派遣切り」などの形で大手企業が相次いで大幅な人員削減を行った時期である。2009年 4 月末には完全失業者が前年より71万人増の346万人にのぼった。そのうち倒産やリストラなどによる「勤め先や事業の都合」による失業者は114万人であり,前年の同じ時期に比べ53万人増と特に急増している。完全失業率(季節調整値)は5.0%(2009年 4 月末)となり,2009年 1 月から0.9ポイント増と大きく悪化し,2003年11月(5.1%)以来 5 年 5 カ月ぶりに 5 %台となるなど深刻さが増している1。その一方で,介護業界における求人は振るわず,「派遣切り」などの影響で介護関係の求職者が増えた2009年 3 月末でも,有効求人倍率(季節調整値)は1.73倍,東京では3.55倍,神奈川で2.92倍であり,特に都市部では深刻である。医療・福祉産業における就業者数は増加しつつあるが,慢性的な人手不足が解消される見込みはない2。 本稿は,高齢化の進展にともない社会保障制度の再構築が進むなか,近年の介護労働,特に訪問介護の特質と専門性をふまえ,措置制度から介護保険制度への移行にともなう介護労働の変容とその財政課題を検討することを目的とする。特に,訪問介護の特質や看護代替性という点からその専門性を特徴づけ,1960年代に制度化されて以降の人件費補助方式と事業費補助方式の特徴や意義,問題点を検討する。また,現在の介護保険制度における身体介護の再定義と新たな財政方式である介護報酬の導入による訪問介護の変容を明らかにし,2000年以降の介護報酬の設定とその後の改定における問題点を検討する。さらに,生活支援(家事援助)サービスの専門性とその意義をふまえ,介護報酬のあり方と介護財政の課題を検討する。最後に,今後の介護労働者の雇用の安定を図1 総務省「労働力調査 平成21年 4 月分(基本集計)結果の概要」。2 2009年 4 月末で,製造業就業者数は前年から63万人減少し1097万人となった。医療・福祉産業における就業者数は614万人となったが,前年からの増減はゼロとなり,08年以降続いていた前年比 6 ~34万人の増加傾向にかげりが見える(総務省,前掲資料)。